オイストラフの至芸を愛でる者にとっては格別のレコードです。 一聴すると全盛期の彼の芸風は、より感情の起伏を織り込んでいるようで、かなり感情的な演奏になっています。1950年代後半のオイストラフの巧さ・重厚さをここで改めて声を大にして言うことでもありませんが、驚異的なドライヴを展開しています。 テンポも速からず、ゆったりと歌い上げる。多少速め弾いてる曲でも、なぜかゆったりしてる。彼の語り方一つ一つに感動させられ、飽きる事なく針を落とすと必ず最後まで聴き通さないと済ませられない、と言う気になる。おそらく、彼独特の線の太さも貢献してると思う。 何れにしていも豊満な美音で悠然と歌う、しかし時には威嚇するとでも表現した方が相応しいフレーズも散見されるオイストラフの真骨頂が発揮された一枚であることは間違いない。 DE DGG SLPM138 714 ダヴィッド&イーゴリ・オイストラフ ヴァイオリン協奏曲集 【収録曲】 バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV.1043 ベートーヴェン:ロマンス1番Op.40・2番Op.50 ヴィヴァルディ:合奏協奏曲Op.3-8 コンサート・ホールに比べて小さく、反響の少ないスタジオで、オンマイクで、しかもエフェクトなどで音をいじっていない録音のようで、響きは適度にあり、柔らかさを持つがぼやけ感はない。低域からどっしり感のある好録音。 この息子のイーゴリも含めてストラディバリウスから引き出してくる音が手に取るように聞こえてきます。名器が放つ高音域のキラキラした倍音、楽器から音が飛び出してくるエネルギー、音自体に備わった凝縮感といったものが、ハッキリと判ります。 静かなところで、目をつぶって耳を傾けていると、いつしかタイムスリップした気分になって、あの巨匠オイストラフが、自分だけのために目の前で演奏している。本盤は盤質も良好で、良質の録音は生々しく聴こえてきます。 http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-22124.jpg March 31, 2020 at 07:56PM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.