通販レコードのご案内 壮大な交響曲と見做して、絶対音楽として描き出している。英デッカによる見事な高音質録音。 《英LONDON ED4盤》 GB LONDON OSA13115 ショルティ/ロンドン・フィルハーモニー管 Bizet's CARMEN ショルティならではの考え抜かれたキャスティングであり、何と言ってもカルメン役のタティアナ・トロヤノスの迫真の絶唱が圧倒的な存在感を示している。また、ドン・ホセ役のプラシド・ドミンゴ、エスカミーリョ役のジョゼ・ヴァン・ダム、そして、ミカエラ役のキリ・テ・カナワなど、録音当時全盛期を迎えた超一流の歌手陣が一同に会するというこれ以上は求め得ないような超豪華な布陣であり、それらの布陣が最高のパフォーマンスを発揮しているというのは、本演奏の価値を高めるのに大きく貢献している。 このカルメンは、このドラマが持つ劇的な要素を太陽のもとにあるかのように、ショルティは明晰に聴かせてくれて素晴らしい。ショルティによる本盤の演奏は、舞台となったスペインのエキゾチックな雰囲気を十分に活かした、ビゼーの最高傑作でもある歌劇「カルメン」を演奏する際のアプローチの王道とは一線を画するタイプと言える。ショルティは、オペラの随所に散りばめられたスペイン風の情緒溢れる旋律の数々を情感豊かに歌わせることに目的を留めずに、この傑作オペラを一つの壮大な交響曲と見做して、絶対音楽としてそのオーケストレーションの興奮が減衰することないよう描き出しているところに趣きがある。ショルティの演奏の特徴でもある切れ味鋭いリズム感と明瞭なメリハリは、本演奏においても最大限に発揮されており、後世の様々な作曲家にオーケストレーションを激賞されたとされるビゼーがスコアに記した音符の数々、そして旋律の数々を、他のどの演奏よりも明晰に描き出すのに成功している。 「ジプシーの歌」における強烈な興奮は滅多に体験できない。歌手は、女性二人がいい。トロヤノスの誇張のない音楽性ゆたかな歌は、現在のスタイリッシュなカルメンとして充分通用するのではないかと思う。ニュージーランド・マオリ族出身のテ・カナワのイメージから若くてかわいらしいミカエラを想像することは躊躇うが、新世代の英デッカの担い手、さすがと思わせる。ドミンゴのホセに、若かりし彼は素晴らしかったんだと再認識。 こう