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爆裂パワー★ロシアの熊 ラザール・ベルマン プロコフィエフ・ロメオとジュリエット、ソナタ2番

20世紀屈指の技巧派 ― アナログ録音完成期だけに音質は頗るよろしいものばかり。

FR DGG 2531 095 ラザール・ベルマン プロコフィエフ・ロメオとジュリエット《仏 ブルーライン盤》FR DGG 2531 095 ラザール・ベルマン プロコフィエフ・ロメオとジュリエット 村上春樹の2013年に大ヒットした小説で一気にメジャー人気を得た感のある往年のピアニスト、ラザール・ベルマン。しかし、小説で取り上げられた『巡礼の年』はあくまで氏の一面を捉えたにすぎません。本来の評価は20世紀屈指の技巧派ピアニストでした。当時のソ連出身のため、いわゆる“西側”への録音はけして多くありませんが、1975年から5年間に渡り名門ドイツ・グラモフォンに残した演奏は、そのどれもが卓越した技巧と研ぎ澄まされた響きを湛えた、西側での名声を確立した氏を代表する名盤ばかりです。1978年録音。

プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』の音楽ほどの悲劇はない

 プロコフィエフは幼少の頃から、母親に連れられてヨーロッパの西欧の街まちを訪問し、たび重なる戦争の合間を縫うようにして西欧諸国やアメリカを訪れています。やがてプロコフィエフは1933年に、社会主義体制が確立された祖国に戻った。そこで心機一転して書いたのが、彼のオーケストラ音楽の最高傑作とされるバレエ音楽《ロメオとジュリエット》です。
 ロミオが死んでしまったと思ったジュリエットが自刃する誰もが知っている悲劇ですが、「社会主義に悲劇はない」ということから徹底して悲劇が排除されていた時代のこと、ロミオが死んでしまったと思いジュリエットが死を先走りますが、間一髪ロメオの自殺の前に目をさまし、めでたしめでたしのハッピーエンドになっていたといいます。
 幼少期から世界中で目にしてきたことから感じるものがあったのでしょう。原作通りの悲劇にしたかったプロコフィエフは、さすがに当時のソビエトのイデオロギーに迎合せざるを得なかった事情の中、機智を働かせ、悲劇の幕切れにしては妙に明るいハ長調で最後の「ジュリエットの死」を始まらせることで切り抜けます。

ラザール・ベルマンは、1930年2月26日、レニングラードに誕生し、2005年2月6日、フィレンツェの自宅で亡くなっています。
 ベルマンは2歳からペテルブルグ音楽院出身の母にピアノを学び、その後、レニングラード音楽院付属の早期英才グループでサフシンスキーに師事。1934年、4歳のときに最初のリサイタルを開いて自作を演奏し、7歳では初めてのレコーディングをおこない、9歳でモスクワ音楽院に入学、高名なゴリデンヴェイゼルに23歳までの長期間にわたって師事し、「私は19世紀の人間であり、ヴィルトゥオーゾと呼ばれるタイプに属しています」と自らを語った有名な言葉の背景にいる存在、この19世紀生まれの巨匠・ゴリデンヴェイゼルからの絶大な影響を受けることとなります。
 1951年にはベルリンで開かれた国際青少年音楽祭で第1位、1956年にブダペストのリスト国際ピアノ・コンクールで第1位となります。モスクワ中央音楽院卒業後は、ソ連国内と東欧諸国でさかんに演奏活動をおこない、特にハンガリーで「リストの再来」として高い評価を獲得します。1958年にはロンドンにもデビューしますが、1960年代に入るとコンサート活動から次第に遠ざかるようになります。
 その間、再びピアノの研鑽に励み、思索を深めたベルマンのピアノは、以前の名技至上主義的なものから、音楽の内容を深くつかみとろうとするものに変わって行き、1971年にはイタリアにデビュー、1976年にはアメリカにデビューしてセンセーショナルな成功を収めることとなリます。日本へも1977年以来何度か訪れており、演奏のほか、教育活動にも熱心なところを見せていました。

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