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ダイナミックで強固なライナー RCA録音はほどよい威圧感からはなれ、澄み切ったひとつの境地をみせる。

GB RCA SB2007 フリッツ・ライナー ブラームス:交響曲3番

最小限の肉体的動作によって最大限の音楽的効果をもたらす。

フリッツ・ライナーはスパルタ型の指揮者で、オーケストラ相手に君主として振る舞い、ちょっとでも演奏が気に入らないと即座に解雇していた。ライナーの指揮は動きが小さく、後方にいる楽団員たちからは非常に見づらかったという。その結果として、楽団員の集中力が極限まで高められ、アンサンブルの緊密さが増し、ライナーが指揮棒を1センチ動かすだけで稲妻のような強奏を炸裂させた。
指揮棒の代わりに活発に動いていたのが「目」である。眼光は鷲のように鋭く、ミスを犯した奏者は、その目で睨まれると生きた心地がしなかったという。ただ、演奏がうまくいった時は団員たちと握手したり、気に入った団員のことを「息子」と呼んだりする一面もあった。
音楽に対して小細工することなく、妥協を許さない姿勢。その演奏を「厳格」「ザッハリヒ」と評する人もいるが、そこには油絵のような艶やかさもあり、体操選手の筋肉のような柔軟さや弾力性もある。ここに選んだRCA録音は晩年の演奏であったことも、ほどよい威圧感からはなれ、澄み切ったひとつの境地をみるようです。

LIVING STEREOの優秀録音・名盤

アメリカの地に骨を埋めたフリッツ・ライナーはその晩年を、手兵のシカゴ交響楽団とともにアメリカRCAレコードに数多くの録音を残し、その優れた演奏の数々は録音から、60年近く経つ今でも名盤定番として高く評価されています。
ハンガリーで生まれたのは1888年で、アメリカで没するのが1963年ですから、ライナーの指揮姿を観れることは数々あることではないのですが、1946年のアメリカ映画「カーネギー・ホール」でハイフェッツがソロを取るチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の伴奏をしていました。それを観たくらいではなんとも言えないことですが、身振りの小さな指揮姿だったと書物には残っています。若いときはドレスデン宮廷歌劇場で指揮をしていたこと、宮廷楽長のリヒャルト・シュトラウスの指導の影響も大きかったのでは、と理由づけられています。
歌劇場では数多くのオペラのオーケストラピットに立ったでしょうし、ヨーロッパで活躍していたのでベートーヴェン、ブラームスの交響曲にも一家言は持っていただろうと想像します。しかしながら残念なことに、RCA録音にはライナーが演奏したオペラや、ベートーヴェン、ブラームスの録音は少ないのですが、今回選んだ6枚は、そこに肉薄してみたかったのでした。
ライナーの演奏の特徴はまずそのダイナミックで強固な音楽作りにあります。小細工することなく、楽曲の持ち味を純粋に引き出すタイプなので、曲によっては一聴すると意外とあっさりして味けないものに聴こえるかもしれません。しかしじっくり聴いてみると、その引き締まった音楽と妥協を許さない姿勢が聴き手に感動を与えます。特にRCAに録音されたレコードにその特徴が出ていると思います。晩年の演奏であったことも、かつての彼の頑固さ、ほどよい威圧感からはなれ、澄み切ったひとつの境地をみるようで大変興味深いものがあります。

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