スキップしてメイン コンテンツに移動

年輪を重ねることによる入神の芸★ギュンター・ヴァント ケルン放送交響楽団 ブルックナー「交響曲8番」

通販レコードのご案内長年の間の不断の努力によって、結局は余人の到達し得ない高みを極める。

DE HARMONIA 1C153-99853/54 ヴァント ブルックナー「交響曲8番」《独ゴールド・レーベル黒文字盤》DE DEUTSCH HARMONIA MUNDI 1C153-99853/54 ヴァント ブルックナー「交響曲8番」 日本でもその凄さが認知されてきた頃、そのきっかけとなったのが一連のブルックナー交響曲録音でした。その頂点ともいうべき第8番。
 その後デジタル時代となってハンブルク北ドイツ響やベルリン・フィルともライヴ録音が遺されましたが、アナログ時代にケルン放送響と組んでセッション録音されたブルックナー録音では、すでにここでひとつ完成した姿が示されています。
 ドイツ・ハルモニア・ムンディ・レーベルがまだEMI系列だった頃の録音。第3番と第8番がドイツ・レコード賞、全集でドイツ・レコード批評家賞を受賞した名盤である。そのドイツレコード賞を取ったのも肯ける充実度です。
 その厳しいまでの音響構造物を、アナログならではの自然な姿で捉えた録音も特筆もの。

あてどなくさまよう森の茫洋たるそれではなく、途方もないスケールで細部まで緻密に組み立てられたドラマ
 辛口ジャーナリスト、ベルガーは、「ヴァントの特徴 ― それは自己抑制、謙譲、仕事への集中、儲け仕事への無関心に集約できるもので、レコード録音にも長年関心を払ってこなかった。ケルン市はヴァントにとって必ずしも理想的な傭い主であったわけではない。 ― しかし ― 彼は公開の演奏活動に尊厳を与えた。それは芸術の真実から生じてくる尊厳であって、空疎な習慣的作業としてすぐに消えていくような偽りの活動によるものでない。」と、30年間にわたるケルン時代のヴァントを大いに労っている。(「ギュンター・ヴァント」ヴォルフガング・ザイフェルト著 根岸一美訳 音楽之友社)
 この期間ヴァントは、とりわけモーツァルトを愛し、オペラや現代音楽を好んだが、後年のライフワークとも云うべきブルックナーを取り上げるようになったのは、かなり遅い時期になってからだった。
 ブルックナーの初録音は、1971年の手兵ギュルツェニヒ管弦楽団との8番だったが、彼はその時62歳になっている。
 自身述べているように、「ブルックナーの作品における構築の巨大な弧線を認識するだけでなく、それだけでもずいぶん時間がかかったが、解釈者として落ち着いてそれらを伝達できるようになるまでに、私はずいぶん多くの時間を必要とした。 ― さらに ― 私が試みているのは、その音楽における宇宙的な秩序、言い換えれば神的な秩序の反映を、明確にさせることである」
 人の運命は様々で、作曲家でも、シューベルトやモーツァルトのように数多くの珠玉作品を残して足早に逝った天才もいれば、ブルックナーは73歳まで与えられた余命を最大限生かして、誠実に推敲を重ねつつ、前人未到の膨大な作品群を残した大作曲家もいる。
 所詮、神によって与えられた人生、精一杯自身の能力を発揮して生き切ることが務めであるならば、ブルックナーにせよ、ヴァントにせよ、夫々見事に天寿を全うしたというべきで、誰にも真似の出来ない賞賛に価する人生だった。

http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-20282.jpg
February 27, 2021 at 03:15PM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1100917.html
via Amadeusclassics

コメント

このブログの人気の投稿

優秀録音*優美な旋律と柔和な表現が忘れがたい ポリーニ、ベーム指揮ウィーン・フィル ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第4番

通販レコードのご案内  華々しいこの曲の随所に聴かれるフレーズは粒立ったピアノのタッチに思わずため息が出てしまう。 《独ブルーライン盤》DE DGG 2530 791 ポリーニ&ベーム ベートーヴェン・ピアノ協奏曲4番  当時ベームの最もお気に入りだったピアニスト、ポリーニとの共演です。全集が計画されていたようですが、1981年にベームが他界、第1、2番を替わりにオイゲン・ヨッフムが振って変則的なカタチで完成しました。  録音はギュンター・ヘルマンス。ポリーニの精巧なタッチが怜悧れいりに録られています。録音としては極上ですが、しかし、演奏としては、この4番は物足りない。ベームはバックハウスとの火花を散らした録音があるし、ポリーニは15年後にアバドとの全集があるので全集が完成しなかったことは残念とは思えませんね。  ベートーヴェンが36歳時に完成したビアノ協奏曲第4番をポリーニが録音したのは34歳の時。第1楽章後半のベートーヴェン自身によるカデンツァを始め、華々しいこの曲の随所に聴かれるフレーズは粒立ったピアノのタッチに思わずため息が出てしまう程のポリーニの若さの発露が優っている。ステレオ録音。 1976年6月録音。優秀録音盤。ギュンター・ヘルマンスの録音。 http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-19239.jpg June 27, 2019 at 09:15AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1065647.html via Amadeusclassics

歴史とジャズと竹あかり ― 映画上映、朗読劇とジャズ演奏で「四時軒の夕べ」を楽しみませんか

四時軒の夕べ 〜歴史とジャズと竹あかり 無料 開催日 2024年10月27日(日) 16:00〜17:10 映画上映 17:10〜17:30 「四賢婦人」朗読劇 17:30〜18:10 横井小楠記念館館長のお話 18:10〜18:30 ライトアップ点灯式 18:20〜20:00 ジャズ演奏(コントラバス、ピアノ、ドラム) 会場 四時軒 (熊本市東区沼山津1-25-91) 対象 どなたでも(申込不要・直接会場へ) 参加費 無料 主催 横井小楠顕正会 協力 熊本市都市デザイン課・秋津まちづくりセンター http://img01.ti-da.net/usr/a/m/a/amadeusrecord/Yokoi-Shohnan_gqR.jpg October 04, 2024 at 03:00AM from アナログレコードの魅力✪昭和の名盤レコードコンサートでご体験ください http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1194695.html via Amadeusclassics

名曲名盤縁起 プラター公園に訪れた、花満開の春を喜ぶ歌 シュトルツ〜歌曲《プラターに再び花は咲いて》

ウィンナ・ワルツの名指揮者シュトルツ没 ― 1975年6月27日  ウィーンという町には1年365日、朝から夜中まで音楽が鳴り響いている。夜中であったにもかかわらず、シュテファン大聖堂の建物そのものから厳かな宗教音楽が聴こえてくるのを味わうことも出来るほど、教会でのレコード録音は深夜を徹して行われている。  ウィーン音楽の王様はシュトラウス・ファミリーだが、20世気に入ってからのウィーンの楽壇で、指揮者・作曲家として大活躍したロベルト・シュトルツの音楽も、ウィーン情緒を満喫させてくれる。オペレッタやワルツに大ヒットがあるが、今日の命日には、100曲を超すという民謡風の歌曲から、ウィーンっ子がみなうたった《プラターに再び花は咲いて》を聴こう。映画「第三の男」で有名になった大観覧車のあるプラター公園の春を讃えた歌で、「プラター公園は花ざかり」というタイトルでも呼ばれている。 通販レコードのご案内  DE DECCA SBA25 046-D/1-4 ロベルト・シュトルツ レハール・メリー・ウィドウ/ジュディッタ  シュトルツにとっては、ヨハン・シュトラウスの作品をオリジナルな形でレコードに入れて後世に遺すことこそ、指揮者としての活動の頂点であることを意味すると云っていたのを読んだ事が有ります。ウィーンは音楽の都で数々の彫像や記念碑や街の通りにシューベルト、ブラームス、モーツアルト、ヨハン・シュトラウスといった大作曲家の彫刻が有ります。いずれも、生まれながらの(あるいはあとから住みついた)ウィーン市民でした。  作曲家であり指揮者であり、無冠のワルツ王の最後の人であるロベルト・シュトルツも、ウィーン音楽の生き字引としてこうしたカテゴリーに入るのではないか。1887年に天才少年ピアニストとして初めてヨーロッパを旅行してから今日に至るまで、ロベルト・シュトルツはその人生を音楽にささげてきたのである。その間には2,000曲の歌、50のオペレッタ、100にのぼる映画音楽を作曲し、数百回のレコーディングを行っているという。本盤もそうした中のセット。皆様をウィーンに誘う魅力タップリです。 ウィンナ・ワルツの伝統を保持する最後の指揮者  ウィーン・オペレッタ最末期の作曲家の一人として『春のパレード』などの作品を発表し人気を得たロベルト・シュトルツは、指揮者でオペレッ