通販レコードのご案内 作品を大きく把握し、そこに自身の感情を移入していくという彼女の特質が如実に現れた演奏です。優秀録音。
《独ジャーマン・カラー・スタンプ・ドッグ盤》DE EMI 1C063-00 393 デュ・プレ&バレンボイム ブラームス・チェロソナタ1番/2番 デュ・プレは、1966年にバレンボイムと21歳の若さで結婚、この録音が行われたのは1968年、まだ23歳である。1968年4月にバレンボイムとブラームスのチェロ・ソナタ第1番と第2番、翌69年4月にジェラルド・ムーアとフォーレ:エレジーをレコーディング、その暮れから翌年1月にかけて、ズーカーマン、バレンボイムとベートーヴェンのピアノ三重奏曲全集をレコーディングしています。レコードに成っていない演奏としてはクリストファー・ヌーペン監督のためにシューベルト『ます』の全曲演奏を含むドキュメンタリーを映像収録が同年8月にありました。しかし1971年頃から多発性硬化症が発症し始めたというから、デュ・プレが指に違和感を覚える2年前、万全な状態での最後の頃だったのだろう…まさに彼女の全盛時の録音だ。余りにも早くこの世を駆け抜けていってしまったデュ・プレ。短い人生を惜しむかのように激しい気迫と卓越した技巧で圧倒的に迫る。伴奏は嫌いなバレンボイムですが、この頃は相思相愛でしたので素晴らしい...だからこそデュ・プレともに最高の出来となったのでしょう。
この演奏は録音もチェロとピアノ各楽器のバランスも最高で、自分がデュ・プレの演奏会に居合わせているなというイメージを盛り上げます。若い情熱を隠すことなく迸らせた熱演は、髪を振り乱したデュ・プレのイメージと見事に合致する。
デュ・プレの奏でる調べは、我々の魂の深いところに響く。ひとはジャクリーヌを妖精と呼んだ。たとえ目の前に落とし穴や障害物がいっぱいあっても、ジャクリーヌは大股で踏み入っていく。ジャクリーヌの天性の感は行く道を誤ることがない。
老巨匠クレンペラーに気に入られたソリストとしてのバレンボイムの演奏は、ブラームスが憂愁なステージ・ピアニストであったことから、ジャクリーヌのチェロが勢い良くとび出すと音楽の温度が一気に上る。
デュ・プレのテクニックは小気味良く、力を抜く余裕はなく音色も時に美感を欠くほどだが、それだけにきれいごとでない独奏が聴くものを圧倒する。ブラームスのふたつのチェロ・ソナタでも作品を大きく把握し、そこに自身の感情を移入していくという彼女の特質が如実に現れた演奏です。第1番における寂しい叙情と内面のやるせない心情を浮かび上がらせた第1楽章、第2番での強烈なパッションに満ちた第1楽章、孤独感を湛えた第2楽章など、感情の振幅の大きさによる激しさと内面の沈潜が見事な対比を示しています。追い書きした通り、ブラームスの真骨頂を彼女は持ち前の感性で、直感的に表現しきっている。チェロの神様の演奏と聴き比べてみたい気持ちになります。1961年、16歳でデビュー、「カザルスに匹敵する」と絶賛を浴びてから9年。レコード会社の肝いりでコンサートツアーとなると協奏曲の演奏を求められるわけで、そこでは作曲家に襲い掛からんばかりの気迫で曲を征服してしまう彼女だが、本当の彼女のチェロは、弾く事を心から楽しむ、自然な演奏にあったのではないだろうかとふと感じました。短く逞しく生きた夭折の天才というイメージは激情系のチェリストとして認知されているが、室内楽を弾かせても抜群の味付けが出来たということがわかります。「天才とは神が与えた重荷だ」というが、4年後に多発性硬化症が発症して28歳でチェロ演奏家として引退するとは思ってもいなかっただろう。
ジャクリーヌは生涯に三台のチェロを愛用。16歳のデビューの際に贈られた、ストラディバリが制作した60余りのチェロの中でも指折りの銘器と言われる1713年製ストラディヴァリウス “ダヴィドフ”。それ以前に弾いていたチェロは1673年製ストラディヴァリウス。このレコードでの使用楽器は、バレンボイムがデュ・プレに贈ったセルジオ・ペレッソン製作の近代的チェロ。多発性硬化症で思うように手先に力が入らないジャクリーヌのための考えられた楽器です。このレコーディングの後、1971年頃から症状は進行します。
丁々発止のやり取りに、ジャズやロックを感じるのは彼女らはロック世代だからだろうか。聴くほどに新鮮な喜びを感じさせてくれるのはバックボーンあってのことではないかしら、と思います。
http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-22165.jpg
November 30, 2020 at 04:30AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1086491.html
via Amadeusclassics
コメント
コメントを投稿