スキップしてメイン コンテンツに移動

最初に聴く名曲名盤★ベリー、プライ、スウィトナー指揮シュターツカペレ・ドレスデン◆モーツァルト・フィガロの結婚

ドイツ語歌唱はモーツァルトでは違和感とはならない。

 序曲冒頭の柔らかく、コットンのような弦楽器の響きを耳にして溜息が出る人も後を絶たないであろう。ベリー、ローテンベルガー、プライ、ギューデン、マティス、シュライアー、ブルマイスター、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団よる演奏。名歌手が勢揃いした超豪華歌手陣をスウィトナーが巧みに統率しおり推進力と弾力性に富むアプローチが小気味よい快演です。
 独語版ですがモーツァルトでは、それほど違和感はありません。モーツァルトのオペラで言葉は、特別意味を持たないだろう。スウィトナーとシュターツカペレ・ドレスデンはモーツァルトのオペラ上演に馴染んでいるので、ドイツ語の響きとモーツァルトの音楽の抑揚をフィットさせるのだろう。スウィトナーの明るく軽快で躍動感溢れる音楽作りが、ドイツ語でも何の抵抗もなく自然にフィガロの世界に誘ってくれる。シルクのようなシュターツカペレ・ドレスデンの美しい響きも絶品。
 ウィーン・フィルとよく似た格調高い響きだけれど、音符を完璧に弾き切るシュターツカペレ・ドレスデンのオーケストラの実力には凄みすら感じさせ、ウィーン・フィルよりもやや落ち着いた輝きが全体によく溶け合ってとてもいい。緩徐部分ではじっくりと落ち着きをみせて、ソロ奏者の妙技がじっくり味わえます。音楽が息づいているというのはこんな感じを指すのであろう。スウィトナーのモーツァルトはかねてから評判がよい。地味な指揮者ではあるが、モーツァルト指揮者としての名声は古くからあり、その録音も廃盤になることなく、聴き継がれている。それは何より、本盤では、モーツァルトの音楽が喜々として歌われており、終始楽しい雰囲気に包まれているからだろう。
 モーツァルトの三大オペラ「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」は、そのどれもが余りに素晴らしいので、これに順序を付けるのはおよそ至難の業です。聴き手の好みに委ねる他に手は無いでしょう。そして、同じことで登場人物の優劣がない。フィガロの結婚では、フィガロとアルマヴィーヴァ伯爵が、2つの主題で。伯爵夫人とスザンナが副旋律だ。表紙に並ぶ4人は誰一人欠くことが出来ない。フィガロ、伯爵、スザンナ、伯爵夫人。この4人にフォーカスした複合協奏曲だ。登場人物それぞれを主役に聴くことも出来る。

通販レコードのご案内

DE EMI C183-30 159-61 スイトナー&ドレスデン&ベリー&プライ モーツァルト・フィガロの結婚(全曲 ドイツ語)《独カラースタンプドッグ盤》DE EMI C183-30 159-61 スイトナー&ドレスデン&ベリー&プライ モーツァルト・フィガロの結婚(全曲 ドイツ語) ベリーのフィガロとプライの伯爵は正に適役。ローテンベルガーのスザンナは凛々しく、マティスのケルビーノも可憐です。出番が少ないながらバジーリオを歌うシュライヤーも光っています。
 フィガロ歌いのヘルマン・プライが、本盤ではアルマヴィーヴァ伯爵を歌っている。フィガロを歌う時と違い、貴族の気品と色気、そして伯爵に必要な恋の情熱の表現も上手い。2年後のベーム盤ではフィガロを歌っているが、アルマヴィーヴァ伯爵の役どころも心得ていたことが素晴らしい成果になったものだろう。フィガロの結婚のドラマは、単なる喜劇では無く、封建制度を風刺、批判する”毒”を含む内容とも受け止められる。かなり入り組んだドタバタ劇ながら、実に計算され尽くした傑作喜劇です。1964年8月、ドレスデンのルカ教会で録音。

http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-20063.jpg
September 30, 2020 at 06:00AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1041448.html
via Amadeusclassics

コメント

このブログの人気の投稿

優秀録音*優美な旋律と柔和な表現が忘れがたい ポリーニ、ベーム指揮ウィーン・フィル ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第4番

通販レコードのご案内  華々しいこの曲の随所に聴かれるフレーズは粒立ったピアノのタッチに思わずため息が出てしまう。 《独ブルーライン盤》DE DGG 2530 791 ポリーニ&ベーム ベートーヴェン・ピアノ協奏曲4番  当時ベームの最もお気に入りだったピアニスト、ポリーニとの共演です。全集が計画されていたようですが、1981年にベームが他界、第1、2番を替わりにオイゲン・ヨッフムが振って変則的なカタチで完成しました。  録音はギュンター・ヘルマンス。ポリーニの精巧なタッチが怜悧れいりに録られています。録音としては極上ですが、しかし、演奏としては、この4番は物足りない。ベームはバックハウスとの火花を散らした録音があるし、ポリーニは15年後にアバドとの全集があるので全集が完成しなかったことは残念とは思えませんね。  ベートーヴェンが36歳時に完成したビアノ協奏曲第4番をポリーニが録音したのは34歳の時。第1楽章後半のベートーヴェン自身によるカデンツァを始め、華々しいこの曲の随所に聴かれるフレーズは粒立ったピアノのタッチに思わずため息が出てしまう程のポリーニの若さの発露が優っている。ステレオ録音。 1976年6月録音。優秀録音盤。ギュンター・ヘルマンスの録音。 http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-19239.jpg June 27, 2019 at 09:15AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1065647.html via Amadeusclassics

歴史とジャズと竹あかり ― 映画上映、朗読劇とジャズ演奏で「四時軒の夕べ」を楽しみませんか

四時軒の夕べ 〜歴史とジャズと竹あかり 無料 開催日 2024年10月27日(日) 16:00〜17:10 映画上映 17:10〜17:30 「四賢婦人」朗読劇 17:30〜18:10 横井小楠記念館館長のお話 18:10〜18:30 ライトアップ点灯式 18:20〜20:00 ジャズ演奏(コントラバス、ピアノ、ドラム) 会場 四時軒 (熊本市東区沼山津1-25-91) 対象 どなたでも(申込不要・直接会場へ) 参加費 無料 主催 横井小楠顕正会 協力 熊本市都市デザイン課・秋津まちづくりセンター http://img01.ti-da.net/usr/a/m/a/amadeusrecord/Yokoi-Shohnan_gqR.jpg October 04, 2024 at 03:00AM from アナログレコードの魅力✪昭和の名盤レコードコンサートでご体験ください http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1194695.html via Amadeusclassics

名曲名盤縁起 プラター公園に訪れた、花満開の春を喜ぶ歌 シュトルツ〜歌曲《プラターに再び花は咲いて》

ウィンナ・ワルツの名指揮者シュトルツ没 ― 1975年6月27日  ウィーンという町には1年365日、朝から夜中まで音楽が鳴り響いている。夜中であったにもかかわらず、シュテファン大聖堂の建物そのものから厳かな宗教音楽が聴こえてくるのを味わうことも出来るほど、教会でのレコード録音は深夜を徹して行われている。  ウィーン音楽の王様はシュトラウス・ファミリーだが、20世気に入ってからのウィーンの楽壇で、指揮者・作曲家として大活躍したロベルト・シュトルツの音楽も、ウィーン情緒を満喫させてくれる。オペレッタやワルツに大ヒットがあるが、今日の命日には、100曲を超すという民謡風の歌曲から、ウィーンっ子がみなうたった《プラターに再び花は咲いて》を聴こう。映画「第三の男」で有名になった大観覧車のあるプラター公園の春を讃えた歌で、「プラター公園は花ざかり」というタイトルでも呼ばれている。 通販レコードのご案内  DE DECCA SBA25 046-D/1-4 ロベルト・シュトルツ レハール・メリー・ウィドウ/ジュディッタ  シュトルツにとっては、ヨハン・シュトラウスの作品をオリジナルな形でレコードに入れて後世に遺すことこそ、指揮者としての活動の頂点であることを意味すると云っていたのを読んだ事が有ります。ウィーンは音楽の都で数々の彫像や記念碑や街の通りにシューベルト、ブラームス、モーツアルト、ヨハン・シュトラウスといった大作曲家の彫刻が有ります。いずれも、生まれながらの(あるいはあとから住みついた)ウィーン市民でした。  作曲家であり指揮者であり、無冠のワルツ王の最後の人であるロベルト・シュトルツも、ウィーン音楽の生き字引としてこうしたカテゴリーに入るのではないか。1887年に天才少年ピアニストとして初めてヨーロッパを旅行してから今日に至るまで、ロベルト・シュトルツはその人生を音楽にささげてきたのである。その間には2,000曲の歌、50のオペレッタ、100にのぼる映画音楽を作曲し、数百回のレコーディングを行っているという。本盤もそうした中のセット。皆様をウィーンに誘う魅力タップリです。 ウィンナ・ワルツの伝統を保持する最後の指揮者  ウィーン・オペレッタ最末期の作曲家の一人として『春のパレード』などの作品を発表し人気を得たロベルト・シュトルツは、指揮者でオペレッ