スキップしてメイン コンテンツに移動

ただただ音符と戯れている★かつて鍵盤の獅子王 ヴィルヘルム・バックハウス ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ12番/18番

通販レコードのご案内 ベートーヴェンを弾く上でピアニストにとって意識せざるを得ない録音。ベートーヴェンを聴く者にとっても最初に選ぶべきレコード。

GB LON CS6366 バックハウス ベートーヴェン・P奏鳴曲12&18番《米ffss、英プレス最初期ブルーバックED1盤》GB LONDON CS6366 バックハウス ベートーヴェン ピアノ・ソナタ12&18番 大きな広がりを持ったような抒情味表現。この演奏を聴くだけでも、バックハウスは不世出の名ピアニストであったことが分かる。バックハウス晩年のステレオ録音による比類なく美しい名演です。嘗て鍵盤の獅子王と異名を取る日本でとりわけ人気の高いバックハウス。彼のピアノは、演奏に特徴がないのが特徴。老齢に達して彼は、ただただ音符と戯れている。

 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ初期における新たな後半のスタートを告げる第12番。この曲が作曲された1800年頃から、ベートーヴェンの大胆な創意と発想が、あらゆるジャンルの作品に表れてきます。4つの楽章の中にソナタ形式は一つもありません。第1楽章は変奏曲、第2楽章は短いスケルツォ、続く第3楽章は葬送行進曲で、第4楽章は対照的な生気あふれるロンドという、その画期的な構成に目を見張ります。

 Op.31の3曲の中で唯一4楽章制の第18番は、緩徐楽章が一つもなく、全体に溌剌としていることから、『狩』と呼称される楽曲。明るくユーモアも感じる第1楽章、スタッカートやアクセントが特徴的なスケルツォの第2楽章、対照的に優雅なメヌエットの第3楽章、そしてタランテラの激しいリズムが支配する第4楽章。斬新な和音で始まる第1楽章の冒頭は注目です。

これは鑑賞者にも学習者にも、永遠にベートーヴェンのピアノソナタのコンパス。

で、彼のことばの中にこんなのがある。
私は、コンサートの準備に際して、楽譜の研究とともに、何よりも音階練習に集中する。それに加えて、アルペジオの練習、さらにバッハの平均律。これが私のテクニックの基礎である。
私のテクニックに興味をいだく人たちに、『私が頼りにするのは音階練習だ。音階プラス努力だ』と言うと、たいていの人は驚くようだ。
・・・・・しかし、私は、まじめに努力する音楽学生に手の届かないような、そんな不思議な秘訣など、何も持ってはいない。
・・・・・もう一度言うが、私のテクニックの基礎は、ただただ音階につきるということを特に強調しておきたい。日ごとの絶えざる音階練習こそ大切なのだ。
 一見、地味で素っ気無い無愛想とさえいえる辛口の表現だがバランスのよさは、聴きこむと学究的と評されるバックハウスらしい構成力と曲への愛情が感じられる。
 実際のバックハウスの演奏は極めて果敢に「主観的」であって、テンポの即興的コントロールによって音楽の迫真性を獲得している事が彼の芸術の真髄であると、この録音を聞く事によって理解されましょう。今世紀のベートーヴェン演奏の規範と評価されるアルバム。それは決して彼の演奏が「教科書的」であると言うのではありません。
 要は、テクニックをひけらかすわけでもなく、特徴が無いのが特徴といえるでしょうか。


http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-23071.jpg
July 29, 2020 at 02:00AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1103910.html
via Amadeusclassics

コメント

このブログの人気の投稿

芳香に充ちている★ティボール・ヴァルガ モーツァルト ヴァイオリン協奏曲5番 スメタナ ピアノ三重奏曲

通販レコードのご案内 ライブですが録音頗る良好です。 《フェスティバル盤》CH FESTIVAL TIBOR VARGA SION ティボール・ヴァルガ モーツァルト・ヴァイオリン協奏曲  ハンガリー出身の名ヴァイオリニスト、ティボール・ヴァルガが自身のオーケストラと共に録音した珠玉のモーツァルトです。このアルバムでは、ヴァイオリン独奏、そして指揮にと大活躍。生き生きとした演奏を繰り広げています。  音楽に身を捧げたとされる名匠、ヴァルガの端整なヴァイオリン演奏は、現在でも前置きなしに、そのまま通用するほどのものだ。1976年スイス・シオンで開催されたティボール・ヴァルガ音楽祭実況録音。ライブですが録音頗る良好です。楽器のヴィヴィッドな響きに驚く。古き良き時代を感じさせる優雅な演奏は近年の演奏が失った芳香に充ちている。この素晴らしいヴァイオリニストの残した遺産を、楽しもうではないですか。 《 FESTIVAL TIBOR VARGA SION 》1967年からスイスのヴァレー州シオン市で開催されている、ティボール・ヴァルガ シオン国際ヴァイオリンコンクールは、比類ない演奏と後進の指導で知られる、シュロモ・ミンツが芸術監督を務め、若い才能の発掘と育成で定評がある、若手ヴァイオリニストのための国際コンクールです。シオン・ヴァレー州音楽祭の期間中に行われ、その中心イベントとして注目を集めています。過去には、前橋汀子やジャン・ジャック・カントロフなど、現在の名ヴァイオリニストが受賞。 通販レコード詳細・コンディション、価格 プロダクト レコード番号 番号なし 作曲家 ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト 演奏者 ティボール・ヴァルガ 録音種別 STEREO 販売レコードのカバー、レーベル写真 コンディション ジャケット状態 M- レコード状態 EX++ 製盤国 CH(スイス)盤 通販レコード 詳細の確認、購入手続きは品番のリンクから行えます。 オーダー番号 34-22740 販売価格 3,300円 (税込) 「クレジットカード決済」「銀行振込」「代金引換」に対応しております。 http://img01.ti-da.net/usr/a/m/a/amadeusrecord/34-2274...

マーラー解釈の神髄*クンダリ、フォレスター、ワルター指揮ニューヨーク・フィル マーラー・交響曲2番「復活」

マーラーの直弟子でもあり、同じユダヤ人として時代を共有したものでなければなし得ない強い共感に満ちあふれた演奏を聴かせている。 通販レコードのご案内 US COLUMBIA M2S 601 ワルター/ニューヨークフィル マーラー 交響曲第2番「復活」(6 eyes original・2枚組)  一時は引退を表明して80歳を越えた晩年のワルターは米国は西海岸で隠遁生活送っていたが、米コロムビア社の若き俊英プロデューサー・ジョン・マックルーアに説得されドイツ物中心にステレオ録音開始。日本の北斎に譬えられたように、まさに80歳にして立つと言った感じ。  引退していたワルターを引っ張り出し、『マーラー直弟子のワルターが伝えるマーラー解釈の神髄。』とコピーが常套句になっていますがワルターの心情はどうだったのか、と考えます。  この『復活』は、その彼のステレオ録音の最初の1枚となったものです。 ワルター最晩年にして初のステレオ録音。マーラーの副指揮者を務めたワルターならではの深い理解に基づく美しく雄大な名演奏です。 いつものコロムビア交響楽団ではなく、マーラーの演奏に関しては別格の完成度を見せるニューヨーク・フィルとの録音であったことも僥倖。 録音:1958年2月ニューヨーク、カーネギー・ホール。優秀録音、名盤。  マーラーの弟子であったワルターが、それまでの手兵ニューヨーク・フィルを指揮してステレオで最初にとりあげたのが『復活』だったというのはまさに僥倖であったといえるでしょう。この録音はニューヨーク・フィルとウェストミンスター合唱団。あとに続くレコードのためのオーケストラのとは違ったんじゃないか。ドイツものとしてマーラーを録音できることに特別な思いを強くしたのではないか。録音は穏和な表情の中にどことなく哀感が漂うような、独特の味わいがあります。 低音域を充実させたドイツ的なスタイルで、ロマンティックな情感を適度に盛り込みながら柔らかくたっぷりと歌わせたスケール感豊かな名演。 ベートーヴェン、シューベルトも、巨匠ワルターの芸風に最もしっくりと馴染む作曲家の1人だったように思う。トスカニーニの熱情や烈しさ、フルトヴェングラーのような即興性を持たなかったが、抒情的な美しさと気品で我々聴き手を包み込み、テンポを誇張するスタイルでなかったが、活気に欠けるこ...

芸術振興の男 ベーム指揮ベルリンPO リヒャルト・シュトラウス・祝典前奏曲、ティル・オイレンシュピーゲル、ドン・ファン他

録音当時へのタイムトラベルした気分になるのがカール・ベームの不思議な魅力だ。  国際化する以前の ― まだカラヤン節に染まりきっていない頃の ― ベルリン・フィルを指揮した『ツァラトゥストラはかく語りき』『祝典前奏曲』『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』『ドン・ファン』『サロメの踊り』の5作品は、すでに名演奏として有名なもので重厚壮麗で骨太なサウンドが素晴らしい聴きものとなっています。1981年8月14日にザルツブルクで亡くなった。ウィーン・フィルを率いて来日していたので錯覚もしていたが、戦後暫くはウィーン国立歌劇場の音楽監督を引き受けていたが1956年に辞任してからは特定のオーケストラや劇場に所属していない。  来日の中継はFMで聞きましたが熊本はまだ生中継ではありませんでした。レコードで聴くカール・ベームの演奏は、いずれもベームの演奏の特徴である厳格な造形、音楽の自然な流れと劇的な緊張感が見事に示されていた。発売されるレコードは良くカラヤンのレコードと比較して二者択一していた。それが死後一気に、わたしの記憶からずっと遠い存在となった。その晩年にロンドンに客演した幾つかの録音だけが、今も心を満たしてくれている。肩の荷が下りた、奔放さとは無縁の人だったが、彼自身が本来持っていた音楽性がそれらにはあると感じているからだ。  リヒャルト・シュトラウスは第二次世界大戦前後において最も大きな作曲家である。その作曲は一般人にとっては難解なものであるが、それはこの人の意図が尋常でなく非凡の才能をもって、交響曲詩の表現力を文学的あるいは哲学的の領域にまで押し上げたからである。この人の大胆な革新態度と強烈な個性は、その比類のない管弦楽法の手腕を駆使してとにもかくにも前例のない驚くべき作品を完成させている。好むと好まざるとに関せず、リヒャルト・シュトラウスの偉大さは認めなければならぬ。  リヒャルト・シュトラウスと親交のあったカール・ベームは、数多くのオペラ上演を中心に彼の芸術の振興に大きく貢献、オーケストラ・レパートリーでも慧眼というほかない作品を知り尽くしたアプローチで聴き手を魅了しました。若い頃リヒャルト・シュトラウスとブルーノ・ワルター双方と親しくなり深く感化されたカール・ベームは、モーツァルト、ワーグナー、ベルク。リヒャルト・シュトラウスの作品を生涯にわ...