スキップしてメイン コンテンツに移動

世界で一番最初の四季 ― バルヒェット ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管 ヴィヴァルディ・四季

通販レコードのご案内クラシック音楽史分野の扉を開いたレコード史上最初の『四季』。

JP LONDON LB13 ミュンヒンガー・シュットゥットガルト室内管 ヴィヴァルディ 四つの合奏協奏曲「四季」
JP LONDON LB13
(演奏者)ラインホルト・バルヒェット(ヴァイオリン)、カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団
(曲目)ヴィヴァルディ 四つの合奏協奏曲「四季」

縦の線の揃った、クラシカルなドイツ風の演奏は非常に魅力的です。古色蒼然としたモノラル録音が、先鋭化した古楽派の刺激に慣れた耳には却って新しい。


第2次世界大戦により大きな痛手を受けたヨーロッパでは、戦後その深い傷を癒すようにバロック音楽ブームが巻き起こります。若手アーティストたちによって、イタリアではイ・ムジチ合奏団、フランスではジャン=マリー・ルクレール器楽アンサンブル(後のパイヤール室内管弦楽団)、そしてドイツではシュトゥットガルト室内管弦楽団などが組織され、演奏会に、レコードに活躍しました。1948年にLPレコードが開発されると、彼らの清新な気分をもった演奏はこの新しいメディアに乗って世界へと広まりました。この流れの中で、戦前あまり顧みられることのなかったヴィヴァルディの『四季』が一躍人気作品となります。


ドイツの名匠カール・ミュンヒンガーは1915年ドイツ、シュトゥットガルト生まれ。1990年没。生地の音楽院で学んだ後、ライプツィヒでヘルマン・アーベントロートに指揮を師事。シュトゥットガルトでオルガニストと合唱指揮者として活動を開始。第2次世界大戦により大きな痛手を受けたヨーロッパでは、戦後その深い傷を癒すようにバロック音楽ブームが巻き起こります。1941年ハノーヴァーのニーダーザクセン交響楽団の指揮者を務め、1945年にシュトゥットガルト室内管弦楽団を組織し、バロック音楽の普及に努めた。イタリア風の軽やかなメロディと、ヨーロッパの四季の移り変わりを描写した音楽は、小編成よる機能的で見通しの良いアンサンブルによってたちまち世界的な人気を獲得。1950年前後に録音したヴィヴァルディの『四季』やバッハによってバロック音楽ブームが沸き起こった。30歳代で注目を寄せるには、これくらいの冒険が大事だった時代だろう。有名すぎるぐらい有名で、軽く聴き流してしまいがちなこの曲にミュンヒンガーが新たな息吹きを与えた、期待以上に四角四面のドイツ風の演奏。イ・ムジチ合奏団のアップテンポで流れるような演奏を聴き慣れている方には随分堅苦しい演奏に聴こえるかもしれないが、バロック音楽の研究が進んで、ヴィヴァルディはイタリアの作曲家だからと定着していくが、ウィーンの作曲家としての受容も一面としてあるので、テンポを落として一音一音を噛みしめるような演奏がいたく心に染みる。


1951年3月に英デッカによりモノラル録音された、カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団盤(英デッカLXT2600)は、その草分け的なLPレコードでした。ソリストはドイツ人のラインホルト・バルヒェット(1920~1962)。明るい音色と弾むようなリズムで拍節をきちんと刻み、バルヒェットがしっとりとした抒情的なソロを聴かせる。イタリア風の軽やかなメロディと、ヨーロッパの四季の移り変わりを描写した音楽は、小編成よる機能的で見通しの良いアンサンブルによってたちまち世界的な人気を獲得。日本でも1954年に発売され、多くのリスナーを魅了しました。その後、1955年にイタリアのイ・ムジチ合奏団が『四季』を録音すると、対照的な演奏スタイルによる二つの名盤として一層親しまれるようになります。ミュンヒンガーが1958年に『四季』をステレオ再録音すると、イ・ムジチも1959年にステレオ再録音してつばぜり合いを演じ、イ・ムジチが1969年に再々録音を行うと、ミュンヒンガーも1972年に再々録音を行いました。この頃、台頭してくるのが音楽学者・鍵盤奏者であったサーストン・ダートがチェンバロを演奏し、ネヴィル・マリナーとの共同作業で録音してバロック音楽を第1稿の形で再演を試みようと進められたプロジェクトでした。ソリストはダートをはじめ、アイオナ・ブラウン、活動初期のマンロウ、タックウェルやモントゥーの息子であるクロード・モントゥー、ジョージ・マルコムも参加しており、その後の古楽界との分岐点的録音であったとも言えます。そしてダートに教えを受けた奏者や影響を受けた演奏家は多くおり、その後の古楽界を支えることになります。

1951年3月 ジュネーヴ、ヴィクトリアホール、モノラル録音。


http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-24378.jpg
June 30, 2020 at 08:15AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1123074.html
via Amadeusclassics

コメント

このブログの人気の投稿

♪東側の最高傑作◉フランツ・コンヴィチュニー ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 ベートーヴェン・交響曲7番

楽譜に対して客観的に誠実に取り組んで、ゆったり目のテンポでスケール大きく描きあげられた演奏と存在感あるゲヴァントハウスの音色 《独ブラック銀文字盤》DE ETERNA 825 416 コンヴィチュニー ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 ベートーヴェン・交響曲7番 旧東ドイツ時代のベートーヴェン演奏の精髄として当時大きな話題となった全集からの一枚。ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスターを終生務めたコンヴィチュニーの最高傑作で、重心の低い質実剛健な演奏は今もってひとつの基準となる名演と言えます。 序奏からズドンとヘビィ級の音塊をぶつけてきます。 ― しかし野暮ったくはない。序奏が終わっても、一切慌てず騒がず。この辺、フランツ・コンヴィチュニーならではの堂々とした音楽作りが堪能できます。 言うまでもないことですがベートーヴェンが250年前に作ったスコアを録音が発明された20世紀から以降の、120年間ほどの演奏を私たちは聞き返している。名指揮者パウル・ファン・ケンペンが死去した後、志鳥栄八郎が「あれほど騒がれていた彼が、いまそうでなくなった。演奏家というのは死んだらおしまいだ」と言っていた。とはいえ名演奏家が死後、レコードで聴き継がれるケースも有る。 どんなに録音技術が進んでも、それは生の姿を十全には伝え得ないが、演奏家の音をいたずらに増幅・美化させることも出来てしまうのが録音技術でもある。ドイツの伝統を継承する巨匠コンヴィチュニーのベートーヴェンは、彼の至芸を愛でる者にとっては格別のレコードです。 聞き手の耳をさっと捕まえてしまうような魅力には乏しいかもしれません。聞き手の耳をすぐに虜にするような愛想の良さや声高な主張もありません。まず、すぐに気がつくのは、今ではなかなか聞くことのできなくなったふくよかで暖かみのあるオーケストラの響きの素晴らしさです。きらきらした華やかさとは正反対の厚みのある響きです。弦もいいですが、特に木管群の響きが魅力的です。確かに、昨今のオーケストラと比べれば機能的とは言えないのでしょうが内部の見通しも良く透明感も失っていません。とは言え、コンヴィチュニーの基本は「淡麗辛口」です。 ドンと構えていて、ここぞというところではぐっと力こぶが入る「野蛮さ」みたいなモノが残っている演奏。隅々まで指揮者の指示が行き届...

芳香に充ちている★ティボール・ヴァルガ モーツァルト ヴァイオリン協奏曲5番 スメタナ ピアノ三重奏曲

通販レコードのご案内 ライブですが録音頗る良好です。 《フェスティバル盤》CH FESTIVAL TIBOR VARGA SION ティボール・ヴァルガ モーツァルト・ヴァイオリン協奏曲  ハンガリー出身の名ヴァイオリニスト、ティボール・ヴァルガが自身のオーケストラと共に録音した珠玉のモーツァルトです。このアルバムでは、ヴァイオリン独奏、そして指揮にと大活躍。生き生きとした演奏を繰り広げています。  音楽に身を捧げたとされる名匠、ヴァルガの端整なヴァイオリン演奏は、現在でも前置きなしに、そのまま通用するほどのものだ。1976年スイス・シオンで開催されたティボール・ヴァルガ音楽祭実況録音。ライブですが録音頗る良好です。楽器のヴィヴィッドな響きに驚く。古き良き時代を感じさせる優雅な演奏は近年の演奏が失った芳香に充ちている。この素晴らしいヴァイオリニストの残した遺産を、楽しもうではないですか。 《 FESTIVAL TIBOR VARGA SION 》1967年からスイスのヴァレー州シオン市で開催されている、ティボール・ヴァルガ シオン国際ヴァイオリンコンクールは、比類ない演奏と後進の指導で知られる、シュロモ・ミンツが芸術監督を務め、若い才能の発掘と育成で定評がある、若手ヴァイオリニストのための国際コンクールです。シオン・ヴァレー州音楽祭の期間中に行われ、その中心イベントとして注目を集めています。過去には、前橋汀子やジャン・ジャック・カントロフなど、現在の名ヴァイオリニストが受賞。 通販レコード詳細・コンディション、価格 プロダクト レコード番号 番号なし 作曲家 ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト 演奏者 ティボール・ヴァルガ 録音種別 STEREO 販売レコードのカバー、レーベル写真 コンディション ジャケット状態 M- レコード状態 EX++ 製盤国 CH(スイス)盤 通販レコード 詳細の確認、購入手続きは品番のリンクから行えます。 オーダー番号 34-22740 販売価格 3,300円 (税込) 「クレジットカード決済」「銀行振込」「代金引換」に対応しております。 http://img01.ti-da.net/usr/a/m/a/amadeusrecord/34-2274...

音楽の深まりと高まり◆存在感が圧倒的 グレン・グールド J.S.バッハ・平均律クラヴィーア曲集2巻 BWV854〜861

通販レコードのご案内 前奏曲とフーガの変幻自在なグールド的バッハのめくるめく世界が展開される。 《英ウォーキング・アイ盤》GB CBS SBRG72337 グレン・グールド バッハ・平均律クラヴィーア曲集2巻  グレン・グールドが米CBSと録音契約、1957年から録音開始した一連のバッハは秀逸で、聴き返す度に抗し難い魅力に引き込まれてしまいます。グールドの類まれなる才能を感じさせる圧倒的な名演だ。グールドによるバッハのピアノ曲の演奏は、オーソドックスな演奏とは到底言い難い超個性的な演奏と言えるところであるが、本盤のパルティータの演奏は、グールドの類稀なる個性と芸術性が十二分に発揮された素晴らしい名演と高く評価したい。  グールド以前のバッハ演奏と比べても、グールド他界後も、幾多の高名なピアニストが登場しようともグールドを過去に押しやるようなピアニストは現れていないと思えるぐらい異色のキャラが光る演奏は、何十回、何百回、レコード盤に針を下ろそうとも、そこには気持ちの良い緊張が生まれてきます。  バッハのゴルトベルク変奏曲の大ヒットによって一躍その名を高めることになったこともあってか、バッハはグールドにとって常に特別な存在であり続けました。その独特な解釈は、粒立ちのはっきりとした音と、思索的な深まりを感じさせる音を使い分けた見事なもので、グノーのアヴェ・マリアに使われておなじみとなった美しい前奏曲で開始される「平均律クラヴィーア曲集」でも、そうした特性がよく活かされており、48の前奏曲とフーガの組み合わせから浮かび上がる音楽の深まりと高まり、存在感が圧倒的です。  LPレコードで4枚。1962年から1971年にかけて6回のニューヨークの30丁目スタジオと、トロントのイートン・オーディトリアムでのセッションで録音。最終的に第1巻、第2巻通しで聴いて統一感を持たせる調整は行われてセット発売もされましたが、第1巻の後半第9曲から第16曲を演奏した本盤は、48の前奏曲とフーガの組み合わせで構成された「平均律クラヴィーア曲集」でも、独立した味わいで鑑賞できる。  侘びた風情の、落ち着いたプレリュードで始まる。初めて訪れた街を旅しているのに、前にも見たような懐かしい雰囲気に浸っていると、古いグレゴリオ聖歌が聞こえてくる第9曲。続く第10曲は、イタリア人の恋人たちがおし...