スキップしてメイン コンテンツに移動

エキゾチックな情景が浮かび上がる生命力漲る躍動感は他の追随を許さない ― フリューベック・デ・ブルゴス「スペインの音楽」


これらはフリューベックが作り続けた素晴らしい印象をさらに助長する優れた演奏だ。例えばアルベニスの《エボカシオン》は「コプラ」(俗謡を意味するスペイン語)での異常に優しい処理で、最も美しく取り扱われ、まったく過去最高の録音である。フルーベックはスペインの音楽の本物の味を確保する方法が、その鮮明な、鋭い、男性的なクオリティにあることを誇らしげに証明している。《火祭りの踊り》は整然としたコントロールによって、いっそう威嚇的になっている。パリ音楽院管弦楽団はこの指揮者のために申し分なく演奏している1963年11月の英グラモフォン誌の批評

2014年6月11日に癌のために80歳で亡くなったスペインの大指揮者、ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスはデ・ファリャ作品の録音をはじめとするスペイン音楽の第一人者として知られますが、録音活動ではそれほど恵まれなかったが、彼の録音キャリアは50年以上に及び、1960年代の初期録音の大半はEMIのために行われました。往年の名ソプラノ、ヴィクトリア・デ・ロス・アンへレスとのファリャの歌劇『儚い人生』やバレエ音楽『三角帽子』、室内オーケストラで伴奏した歌曲集などが名盤として知られたところだ。


ブラームスを始めとするゲルマン系作曲家の作品を得意としていたし、その一方で母国スペインやフランスに代表される全く異なったラテン系の音楽もこよなく愛し、ここでも迸るように情熱的で歌心溢れるお国物への絶妙な巧さを披露している。この〝スパニッシュ・フェイヴァリッツ〟の雰囲気豊かな録音はその見事な例です。第1曲目の『火祭りの踊り』はファンタジーに溢れ、しかもパリ音楽院管弦楽団の色彩豊かな音色を縦横に引き出している。同じくファリャのスペイン舞曲は歌劇『はかなき人生』の祝宴の場面で演奏される音楽で、舞台上では実際に舞踏が披露される、このオペラがピークを迎える華やかさとその後に訪れる悲劇の予感を、コントラストを素晴らしくフリューベック・デ・ブルゴスは表現する。アルベニスとその後輩トゥリーナの交響詩「幻想舞曲集」の光彩感や情景描写は比類なく、デ・ファリャやアルベニスの名作もスペイン情緒をオーケストレーションによって描いた一種の音画であり、目の前にエキゾチックな情景を浮かび上がらせるような手法は流石だ。


彼が1963年にパリ音楽院管弦楽団に客演した時の音源で、解散前のパリ音楽院の一癖も二癖もある教授達を見事に統率して光彩に溢れ、また時には深い陰翳を映し出したリズミカルで滾るような熱いスペイン情緒を満喫できる貴重な1枚だ。音ひとつひとつにフリューベック・デ・ブルゴスのDNAが沁み込んだ印象で圧巻。

1963年1月4, 7, 9 & 10日パリ、サル・ワグラム録音, プロデューサ:ヴィクター・オロフ Victor Olof,、エンジニア:ポール・ヴァヴァスール Paul Vavasseur。


http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-23890.jpg
May 26, 2020 at 10:20PM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1120785.html
via Amadeusclassics

コメント

このブログの人気の投稿

芳香に充ちている★ティボール・ヴァルガ モーツァルト ヴァイオリン協奏曲5番 スメタナ ピアノ三重奏曲

通販レコードのご案内 ライブですが録音頗る良好です。 《フェスティバル盤》CH FESTIVAL TIBOR VARGA SION ティボール・ヴァルガ モーツァルト・ヴァイオリン協奏曲  ハンガリー出身の名ヴァイオリニスト、ティボール・ヴァルガが自身のオーケストラと共に録音した珠玉のモーツァルトです。このアルバムでは、ヴァイオリン独奏、そして指揮にと大活躍。生き生きとした演奏を繰り広げています。  音楽に身を捧げたとされる名匠、ヴァルガの端整なヴァイオリン演奏は、現在でも前置きなしに、そのまま通用するほどのものだ。1976年スイス・シオンで開催されたティボール・ヴァルガ音楽祭実況録音。ライブですが録音頗る良好です。楽器のヴィヴィッドな響きに驚く。古き良き時代を感じさせる優雅な演奏は近年の演奏が失った芳香に充ちている。この素晴らしいヴァイオリニストの残した遺産を、楽しもうではないですか。 《 FESTIVAL TIBOR VARGA SION 》1967年からスイスのヴァレー州シオン市で開催されている、ティボール・ヴァルガ シオン国際ヴァイオリンコンクールは、比類ない演奏と後進の指導で知られる、シュロモ・ミンツが芸術監督を務め、若い才能の発掘と育成で定評がある、若手ヴァイオリニストのための国際コンクールです。シオン・ヴァレー州音楽祭の期間中に行われ、その中心イベントとして注目を集めています。過去には、前橋汀子やジャン・ジャック・カントロフなど、現在の名ヴァイオリニストが受賞。 通販レコード詳細・コンディション、価格 プロダクト レコード番号 番号なし 作曲家 ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト 演奏者 ティボール・ヴァルガ 録音種別 STEREO 販売レコードのカバー、レーベル写真 コンディション ジャケット状態 M- レコード状態 EX++ 製盤国 CH(スイス)盤 通販レコード 詳細の確認、購入手続きは品番のリンクから行えます。 オーダー番号 34-22740 販売価格 3,300円 (税込) 「クレジットカード決済」「銀行振込」「代金引換」に対応しております。 http://img01.ti-da.net/usr/a/m/a/amadeusrecord/34-2274...

マーラー解釈の神髄*クンダリ、フォレスター、ワルター指揮ニューヨーク・フィル マーラー・交響曲2番「復活」

マーラーの直弟子でもあり、同じユダヤ人として時代を共有したものでなければなし得ない強い共感に満ちあふれた演奏を聴かせている。 通販レコードのご案内 US COLUMBIA M2S 601 ワルター/ニューヨークフィル マーラー 交響曲第2番「復活」(6 eyes original・2枚組)  一時は引退を表明して80歳を越えた晩年のワルターは米国は西海岸で隠遁生活送っていたが、米コロムビア社の若き俊英プロデューサー・ジョン・マックルーアに説得されドイツ物中心にステレオ録音開始。日本の北斎に譬えられたように、まさに80歳にして立つと言った感じ。  引退していたワルターを引っ張り出し、『マーラー直弟子のワルターが伝えるマーラー解釈の神髄。』とコピーが常套句になっていますがワルターの心情はどうだったのか、と考えます。  この『復活』は、その彼のステレオ録音の最初の1枚となったものです。 ワルター最晩年にして初のステレオ録音。マーラーの副指揮者を務めたワルターならではの深い理解に基づく美しく雄大な名演奏です。 いつものコロムビア交響楽団ではなく、マーラーの演奏に関しては別格の完成度を見せるニューヨーク・フィルとの録音であったことも僥倖。 録音:1958年2月ニューヨーク、カーネギー・ホール。優秀録音、名盤。  マーラーの弟子であったワルターが、それまでの手兵ニューヨーク・フィルを指揮してステレオで最初にとりあげたのが『復活』だったというのはまさに僥倖であったといえるでしょう。この録音はニューヨーク・フィルとウェストミンスター合唱団。あとに続くレコードのためのオーケストラのとは違ったんじゃないか。ドイツものとしてマーラーを録音できることに特別な思いを強くしたのではないか。録音は穏和な表情の中にどことなく哀感が漂うような、独特の味わいがあります。 低音域を充実させたドイツ的なスタイルで、ロマンティックな情感を適度に盛り込みながら柔らかくたっぷりと歌わせたスケール感豊かな名演。 ベートーヴェン、シューベルトも、巨匠ワルターの芸風に最もしっくりと馴染む作曲家の1人だったように思う。トスカニーニの熱情や烈しさ、フルトヴェングラーのような即興性を持たなかったが、抒情的な美しさと気品で我々聴き手を包み込み、テンポを誇張するスタイルでなかったが、活気に欠けるこ...

芸術振興の男 ベーム指揮ベルリンPO リヒャルト・シュトラウス・祝典前奏曲、ティル・オイレンシュピーゲル、ドン・ファン他

録音当時へのタイムトラベルした気分になるのがカール・ベームの不思議な魅力だ。  国際化する以前の ― まだカラヤン節に染まりきっていない頃の ― ベルリン・フィルを指揮した『ツァラトゥストラはかく語りき』『祝典前奏曲』『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』『ドン・ファン』『サロメの踊り』の5作品は、すでに名演奏として有名なもので重厚壮麗で骨太なサウンドが素晴らしい聴きものとなっています。1981年8月14日にザルツブルクで亡くなった。ウィーン・フィルを率いて来日していたので錯覚もしていたが、戦後暫くはウィーン国立歌劇場の音楽監督を引き受けていたが1956年に辞任してからは特定のオーケストラや劇場に所属していない。  来日の中継はFMで聞きましたが熊本はまだ生中継ではありませんでした。レコードで聴くカール・ベームの演奏は、いずれもベームの演奏の特徴である厳格な造形、音楽の自然な流れと劇的な緊張感が見事に示されていた。発売されるレコードは良くカラヤンのレコードと比較して二者択一していた。それが死後一気に、わたしの記憶からずっと遠い存在となった。その晩年にロンドンに客演した幾つかの録音だけが、今も心を満たしてくれている。肩の荷が下りた、奔放さとは無縁の人だったが、彼自身が本来持っていた音楽性がそれらにはあると感じているからだ。  リヒャルト・シュトラウスは第二次世界大戦前後において最も大きな作曲家である。その作曲は一般人にとっては難解なものであるが、それはこの人の意図が尋常でなく非凡の才能をもって、交響曲詩の表現力を文学的あるいは哲学的の領域にまで押し上げたからである。この人の大胆な革新態度と強烈な個性は、その比類のない管弦楽法の手腕を駆使してとにもかくにも前例のない驚くべき作品を完成させている。好むと好まざるとに関せず、リヒャルト・シュトラウスの偉大さは認めなければならぬ。  リヒャルト・シュトラウスと親交のあったカール・ベームは、数多くのオペラ上演を中心に彼の芸術の振興に大きく貢献、オーケストラ・レパートリーでも慧眼というほかない作品を知り尽くしたアプローチで聴き手を魅了しました。若い頃リヒャルト・シュトラウスとブルーノ・ワルター双方と親しくなり深く感化されたカール・ベームは、モーツァルト、ワーグナー、ベルク。リヒャルト・シュトラウスの作品を生涯にわ...