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スケール雄大で濃厚、自分の信じる流儀を貫く ― クナッパーツブッシュ指揮ウィーン・フィルのワーグナー・大序曲集

いつもながら滔々とテンポが遅くドイツの幽遠たる森に足を踏み入れるような深き響き。而してパワフルで録音も素晴らしく、ウィーン・フィルの魅力を最高に引き出している。


GB DEC ACL22 クナッパーツブッシュ ワーグナー・管弦楽曲集

《英ACE OF CLUBS盤》GB DECCA ACL22 クナッパーツブッシュ ワーグナー・管弦楽曲集

これが他の指揮者ではなかなか見られない、自分の信じる流儀を貫くクナッパーツブッシュ流の美学だ。

風雷暴氏をして遠い存在と言わしめるクナッパーツブッシュの最高傑作と言ってよい代表的アルバムであり、弦の黄金美の放射が凄まじい戦前の名残も香る、黄金期のウィーン・フィルの陶酔的音響に心を揺さぶられるのは、ほぼ再現不能の絶滅芸術ゆえである。
 空前の活況を示した1950年代のバイロイト音楽祭の中にあって、1955年にクナッパーツブッシュが指揮した『オランダ人』は、強烈な個性を放った名演でした。ヴォルフガング・ワーグナー新演出のプロダクションで、もともとヨゼフ・カイルベルトが担当でしたが、それに対してクナッパーツブッシュが「わしにも振らせろ」と強引に割り込み、結果7月22日、30日、8月3日の公演をクナッパーツブッシュが指揮、さらに8月7、15、19日の公演をカイルベルトが指揮しました。クナッパーツブッシュとしても、この機会にどうしても指揮したかったのでしょう。
 故黒田恭一氏が「この《オランダ人》は海が主役だ」と述べたように、大きくうねるクナッパーツブッシュの音楽は、物語の背後に存在する広大な海原を感じさせるようなもので、そのスケールの大きさは他に類を見ないものです。ミュンヘン・フィル盤も無論悪くありませんが、この盤ではまだ若さがあります。
 そして《タンホイザー》。あのウィーン・フィルを熱くさせ、ここまで官能的に響かせる指揮者は彼だけでしょう。
 弱奏部での文字通り「身の毛もよだつような」恐ろしい緊張感。それが強烈なクレシェンドで激しい苦悩の叫びとなる劇的迫力。その後の感情の大波が揺れるような旋律の表出、生々しい金管のアクセント、金切り声のような高弦のトレモロ、地獄の沙汰が下されたようなティンパニの最強打。と、繊細さとド迫力。クナッパーツブッシュは迫真の演奏で作品のドラマを活かしきってゆく。
 いずれもウィーン・フィルの豊潤な響きが魅力。クナッパーツブッシュによるスケール雄大で濃厚なワーグナーです。音質もモノラル最良の水準です。
《ワーグナー管弦楽名曲集》
Band Title Time
A1 歌劇『タンホイザー』序曲とヴェヌスベルクの音楽 (21:30)
B1 歌劇『さまよえるオランダ人』 (10:36)
B2 楽劇『ワルキューレ』~「ワルキューレの騎行」 (5:53)
1953年録音モノラル録音

http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-24211.jpg
May 30, 2020 at 06:30AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1121305.html
via Amadeusclassics

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