これが他の指揮者ではなかなか見られない、自分の信じる流儀を貫くクナッパーツブッシュ流の美学だ。
風雷暴氏をして遠い存在と言わしめるクナッパーツブッシュの最高傑作と言ってよい代表的アルバムであり、弦の黄金美の放射が凄まじい戦前の名残も香る、黄金期のウィーン・フィルの陶酔的音響に心を揺さぶられるのは、ほぼ再現不能の絶滅芸術ゆえである。
空前の活況を示した1950年代のバイロイト音楽祭の中にあって、1955年にクナッパーツブッシュが指揮した『オランダ人』は、強烈な個性を放った名演でした。ヴォルフガング・ワーグナー新演出のプロダクションで、もともとヨゼフ・カイルベルトが担当でしたが、それに対してクナッパーツブッシュが「わしにも振らせろ」と強引に割り込み、結果7月22日、30日、8月3日の公演をクナッパーツブッシュが指揮、さらに8月7、15、19日の公演をカイルベルトが指揮しました。クナッパーツブッシュとしても、この機会にどうしても指揮したかったのでしょう。
故黒田恭一氏が「この《オランダ人》は海が主役だ」と述べたように、大きくうねるクナッパーツブッシュの音楽は、物語の背後に存在する広大な海原を感じさせるようなもので、そのスケールの大きさは他に類を見ないものです。ミュンヘン・フィル盤も無論悪くありませんが、この盤ではまだ若さがあります。
そして《タンホイザー》。あのウィーン・フィルを熱くさせ、ここまで官能的に響かせる指揮者は彼だけでしょう。
弱奏部での文字通り「身の毛もよだつような」恐ろしい緊張感。それが強烈なクレシェンドで激しい苦悩の叫びとなる劇的迫力。その後の感情の大波が揺れるような旋律の表出、生々しい金管のアクセント、金切り声のような高弦のトレモロ、地獄の沙汰が下されたようなティンパニの最強打。と、繊細さとド迫力。クナッパーツブッシュは迫真の演奏で作品のドラマを活かしきってゆく。
いずれもウィーン・フィルの豊潤な響きが魅力。クナッパーツブッシュによるスケール雄大で濃厚なワーグナーです。音質もモノラル最良の水準です。
空前の活況を示した1950年代のバイロイト音楽祭の中にあって、1955年にクナッパーツブッシュが指揮した『オランダ人』は、強烈な個性を放った名演でした。ヴォルフガング・ワーグナー新演出のプロダクションで、もともとヨゼフ・カイルベルトが担当でしたが、それに対してクナッパーツブッシュが「わしにも振らせろ」と強引に割り込み、結果7月22日、30日、8月3日の公演をクナッパーツブッシュが指揮、さらに8月7、15、19日の公演をカイルベルトが指揮しました。クナッパーツブッシュとしても、この機会にどうしても指揮したかったのでしょう。
故黒田恭一氏が「この《オランダ人》は海が主役だ」と述べたように、大きくうねるクナッパーツブッシュの音楽は、物語の背後に存在する広大な海原を感じさせるようなもので、そのスケールの大きさは他に類を見ないものです。ミュンヘン・フィル盤も無論悪くありませんが、この盤ではまだ若さがあります。
そして《タンホイザー》。あのウィーン・フィルを熱くさせ、ここまで官能的に響かせる指揮者は彼だけでしょう。
弱奏部での文字通り「身の毛もよだつような」恐ろしい緊張感。それが強烈なクレシェンドで激しい苦悩の叫びとなる劇的迫力。その後の感情の大波が揺れるような旋律の表出、生々しい金管のアクセント、金切り声のような高弦のトレモロ、地獄の沙汰が下されたようなティンパニの最強打。と、繊細さとド迫力。クナッパーツブッシュは迫真の演奏で作品のドラマを活かしきってゆく。
いずれもウィーン・フィルの豊潤な響きが魅力。クナッパーツブッシュによるスケール雄大で濃厚なワーグナーです。音質もモノラル最良の水準です。
《ワーグナー管弦楽名曲集》
Band | Title | Time |
---|---|---|
A1 | 歌劇『タンホイザー』序曲とヴェヌスベルクの音楽 | (21:30) |
B1 | 歌劇『さまよえるオランダ人』 | (10:36) |
B2 | 楽劇『ワルキューレ』~「ワルキューレの騎行」 | (5:53) |
1953年録音モノラル録音
http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-24211.jpg
May 30, 2020 at 06:30AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1121305.html
via Amadeusclassics
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