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立体的に大きく深々と広がるウィーン・フィルの豊麗なサウンドと、グルダの弾くベーゼンドルファーの深みのある低域の音色

通販レコードのご案内グルダの強烈な個性は押さえられているわけだが、それでも作品の優美さとともに、適度の線の太さが男性的ともいえるたくましさを伴って示されている。

JP LONDON K38C70021 グルダ・ホルストシュタイン・ウィーンフィル ベートーヴェン・P協奏曲4番
JP LONDON K38C70021
(演奏者) フリードリヒ・グルダ ホルスト・シュタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(曲目)ベートーヴェン ピアノ協奏曲4番

K38C700**番号付した最初期キング・スーパーアナログ盤は、一級のオーディオファイル盤として高名な米国モービルフィデリティ盤と同じ横浜・日本ビクター・プレス。表紙帯には180gと謳ってますが正確に計測したらそれ以上有る200g重量盤でした。こういうところが一枚一枚が手作りの証左といえましょうか。


スーパー・アナログ・ディスク

  1. 比類なき広大な周波数レンジ(10Hz~35KHz)
  2. めざましいトランジェント特性(卓越した解像度)
  3. 迫真のエネルギー感(瞬発力ある圧倒的な迫力)
  4. 低歪率(清澄な透明感、混濁のない音質)
  5. アナログの精密度(キメが細かい、なめらかな肌触り)

等のクオリティを有し、特別高品質材料を使用した超重量レコード(180g)に特別限定プレスと謳われた宣伝文句は30年前は「誇大広告」と不審に思いましたが、ピュア・オーディオに進歩している現在のオーディオ装置故か、昭和のレコード盤はやはり一級のオーディオファイル盤として再認識しています。


音楽する喜びがそのままストレートに伝わってくるかのような演奏

ショルティ&アシュケナージのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集は英国でもよく見かけますが、同時期のこのグルダ&シュタイン盤はなかなか出会いません。1970年&71年のDECCAによるステレオ録音。ジェームズ・ロック&ゴードン・パリーという名エンジニア・コンビによって、ウィーンのゾフィエンザールで収録されたこの録音は実に見事なもので、立体的に大きく深々と広がるウィーン・フィルの豊麗なサウンドと、グルダの弾くベーゼンドルファーの低域は他の全集寄せ付けない。


グルダは1950年代のモノラル時代に、デッカにベートーヴェンのソナタ全集を始め、協奏曲やソロ、歌曲の伴奏にいたるまで、かなりまとまった録音を残しています。その後は、MPSやアマデオなど他レーベルへの録音がメインになったため、1966年のマゼール/ウィーン・フィルのシュトラウス「町人貴族」のピアノ・ソロ・パートに参加したことがありましたが、このベートーヴェンのピアノ協奏曲全集は、ひさしぶりのデッカ復帰録音となりました。モーツァルトの作品ではジャズ的なリズムの崩しや即興を取り入れていたグルダですが、ここではそうした扱いは微塵もなく、カデンツァは全てベートーヴェン作のものが選ばれていることも、当時40歳代になったばかりで心技ともに脂の乗り切ったグルダの真剣な取り組みようが伺い知れます。ザイドルホーファーに伝授されたウィーン・ピアノ楽派の伝統の担い手としての矜持を感じさせる、1967年のベートーヴェン・ソナタ全集から引き続いた、純正統派のベートーヴェン解釈が刻み込まれている点が特徴です。感興の赴くまま、自由奔放に弾きあげていながら、それでいて決して情緒におぼれないというのも彼の長所。全体は早めのテンポで進められますが、あらゆる音符がグルダのものとして消化され、有機的・音楽的な連関性はこれ以上望むべくもないほど。しかもデリケートで緻密なニュアンスが満載。音楽する喜びがそのままストレートに伝わってくるかのような演奏である。


《ピアノ協奏曲第4番》の演奏は全3楽章ともに平衡感のつよい造形で、テンポ、デュナーミク、細部のエクスプレッションのすべてにわたって中庸を得ており、まったく無理がない。つまりグルダの強烈な個性は押さえられているわけだが、それでも作品の優美さとともに、適度の線の太さが男性的ともいえるたくましさを伴って示されている。そしてグルダの音楽的なソロを十全にバックアップしているのが、グルダとほぼ同年配だったホルスト・シュタイン(1928〜2008)指揮するウィーン・フィルハーモニーの濃厚かつ雄弁なオーケストラ・パートです。シュタインは、まるで若き日のカール・ベームを思わせるような意志的な解釈のもと、ウィーン・フィルからコクと立体感のある響きを引き出しています。シュタインはクナッパーツブッシュやヴァントなどドイツの名指揮者を輩出したエルバーフェルトの出身で、このグルダとの共演録音のころは、ちょうどバイロイト音楽祭やウィーン国立歌劇場での卓越したオペラ指揮者としての活動を開始し始めたころに当たっていました。シュタインの指揮はスケールが大きく、オーケストラのコントロールも十分で、模範的と言えるほどすこぶる健康的だ。ベートーヴェンのピアノ協奏曲の数多いレコードの中で、これほど愉悦感に満ち溢れた演奏というのも珍しい。デッカに1970年代を通じてウィーン・フィルやスイス・ロマンド管との名盤を残していくことになるきっかけとなったのが、このグルダとのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集での大きな芸術的成功にありました。

1970年6月、1971年1月ウィーン、ゾフィエンザール録音。[プロデューサー] デイヴィッド・ハーヴィー、[レコーディング・エンジニア] ゴードン・パリー、ジェームズ・ロック


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