通販レコードのご案内数あるシューベルトの名曲の中でどうしても一曲だけというなら私はこれを選びます。
(演奏者)ジュリアードSQ、バーナード・グリーンハウス
(曲目)シューベルト・弦楽五重奏曲
ジュリアード四重奏団の演奏は情熱あふれ、陰翳も豊か。とりわけ2楽章の歌と情熱、3楽章のスケルツォ主題とトリオとの対比の妙がいい。
ジュリアード弦楽四重奏団の第1回目のベートーヴェン全集における、彼らのシャープな技術と強烈な表現力は、柔和なスタイルが主流だった当時の四重奏の演奏に大きな衝撃を与えた。このキビキビしたテンポは快感を伴う。そのベートーヴェンの延長にあるこのモーツァルト聴いてと、まだブダペストを聴くのかと自問した。
ジュリアード音楽院の校長であった作曲家ウィリアム・シューマンの提唱により第2ジュリアード弦楽四重奏団は、同校の教授たちによる4人のメンバーの高い技量を背景とした、感情をそぎ落としたドライで直線的な表現で世界の好楽家に衝撃を与えました。彼らの出現はまさに戦前のヨーロッパの演奏伝統を打ち破るように、当時の聴き手を驚かせるエポックメーキングな出来事でした。
戦前の弦楽四重奏と言えば、カペー弦楽四重奏団やレナー弦楽四重奏団のように第1ヴァイオリンが技術的にも音楽的にも抜きん出ていて、アンサンブルを主導しチームの音楽性を支配することによって演奏を作り上げていました。また演奏解釈上も旋律を曲線的に捉え、テンポの緩急を多用した情緒あふれる演奏スタイルが主流でした。そうした嗜好の中で、安定しきった技巧と精妙な合奏、鋭い感覚の冴え、そして格調高い音楽は、およそ余分な肉づけを見せない表現法で端的に弦楽四重奏という音楽の本質を明らかにし、まさにクァルテットの理想郷ともいうべき神業が実現されていた、と云わしめた。
そして、創設以来1997年まで半世紀にわたって第1ヴァイオリンを務めたロバート・マン、そのものだったと今は云えよう。他のメンバーは何度も入れ替わっている ― そのマンを中心に、卓抜した統一感のある演奏を特色とした、当時ブダペストと並ぶクァルテットであったことは間違いない。
異世界的に、この世ならざるソノリティをもって演奏された例は、他になかなかない。
数あるシューベルトの名曲の中でどうしても一曲だけというなら私はこれを選びます。この曲は、主に海外の批評家筋でアルバン・ベルク四重奏団の演奏が評価が高いので、それから聴いてしまった初心者には気の毒です。シューベルトは毎日ベートーヴェンの背中を見つめ続けて、交響曲では向かい合うことは出来ませんでしたが、室内楽では一歩、ベートーヴェンを追い越した。弦楽四重奏にチェロをもう一本応援を求めてのことだから、ベートーヴェンの横顔を伺うことはできなかった様子ですが。多楽章をあれこれと試みたベートーヴェンの後期四重奏曲は様式への挑戦。シューベルトはチェロを増やすことで、リズムとハーモニーから解放された低音のメロディを勝ち得た。という進化でした。
弦楽五重奏曲には、弦楽四重奏にヴィオラを加える「ヴィオラ型」と、弦楽四重奏にチェロを加える「チェロ型」の2タイプあり、モーツァルトやベートーヴェンはヴィオラ型を好み、ボッケリーニやシューベルトはチェロ型を好みました。
死の年の作品であるせいか時に暗い影がさすこともあるが、シューベルトらしい歌に富みかつ構築性にも欠けていない名曲だ。ジュリアードの演奏は情熱あふれ、陰翳も豊か。とりわけ2楽章の歌と情熱、3楽章のスケルツォ主題とトリオとの対比の妙がいい。
シューベルトの心が引き裂かれるような切なく美しい旋律が連ねられている、とても内面的な音楽をこれほどまでに異世界的に、この世ならざるソノリティをもって演奏された例は、他になかなかないといえるでしょう。
ちなみにブラームスは若い頃にチェロ型を試みようとして不完全に終わり、後年になってヴィオラ型で2曲の弦楽五重奏曲を残しています。内声の充実を求めたヴィオラ型、厚く深みのある響きを求めたチェロ型。作曲家によって好みが異なるのはとても興味深い表れ方です。
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October 29, 2019 at 08:45AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1108456.html
via Amadeusclassics
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