スキップしてメイン コンテンツに移動

心に突き刺さってくる ハイフェッツ、ビーチャム指揮ロイヤル・フィル モーツァルト、メンデルスゾーン・ヴァイオリン協奏曲

通販レコードのご案内 難しすぎたモーツァルトと、彼はユダヤ人じゃないだろうとナチがスットボケたメンデルスゾーン。

DE VSM 1C053-01 365 ヤッシャ・ハイフェッツ モーツァルト&メンデルスゾーン・ヴァイオリン協奏曲《独ピンク DACAPO 盤》DE VSM 1C053-01 365 ヤッシャ・ハイフェッツ モーツァルト&メンデルスゾーン・ヴァイオリン協奏曲 これまでに、五嶋みどりやベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターの樫本大進等が演奏し、五嶋龍が現在演奏しているストラディバリウスの銘は「ジュピター」。そのストラディバリウスの中でも3大銘器の「ドルフィン」「バロン」「メサイア」は帝王ハイフェッツが演奏していた。彼のレコードで聴く音色は、そのどのヴァイオリンかということになる。
 銘の由来はそれぞれだが、巨匠アイザック・スターンが生涯愛用した楽器の中には小さなラベルが貼られ、赤いインクで「このデル・ジェスは私の生涯を通じて忠実なパートナーだった。イザイ1928」とフランス語で書かれている。イザイの国葬の際には棺の前をクッションに載せられ行進した名器としても知られ「イザイ」の名前が付けられた。そのアイザック・スターンの登場により、ハイフェッツは自分のテクニックを鍛えなおす為に演奏活動を中断して1年間練習したそうですが、そもそもハイフェッツが大衆向けの最高のパフォーマーなら、アイザック・スターンのヴァイオリン演奏の音色は美音というより、時に荒々しく、豪放磊落。それはハイフェッツにはないものだったと思われます。ハイフェッツはアグレッシブ ― 積極的で刺激的。テクニックではスターンの演奏で、それはそれぞれに自分の音楽性に絶対の自信が感じられる。
 イメージよりももっとロマンティックで名人芸的なモーツァルトの4番の協奏曲。本当はもっと古典的で荘重なメンデルスゾーンの協奏曲。 ― 演奏家としてのモーツァルトの名声は、主にピアニストとしてのそれである。彼の名前は19世紀になっても、「ウィーンの偉大なピアノ演奏家にして即興の名人」として伝わっていた。しかし、モーツァルトはそればかりではなかった。彼には父というすばらしい教師がいたお陰で、ヴァイオリンやヴィオラの奏者としても腕があった。彼がこの楽器を使って名人芸を披露することを目的に作曲したのは明らかで、彼の知る限りモーツァルトに優るヴァイオリン奏者がいなかった不遇が20歳前にこの楽器を独奏とする協奏曲の作曲から次第に遠ざかったものだろう。一方、メンデルスゾーンの楽譜は焚書としてナチス・ドイツから排除されながらも、ホ短調ヴァイオリン協奏曲はラジオ放送され、ライヴ録音も残っている。
 作品を鋳型にはめて解釈すると見落とされてしまうこうした面を、ハイフェッツは見逃しませんでした。あくまでも音楽を主体に、己の音を紡ぎ出すことに専念した彼のこうした姿勢は衒学的に非難されがちですが、この盤に収録されている馴染み深い協奏曲を聴けば、ハイフェッツがいかに偉大なる解釈レベルに達していた演奏家であるか明確になることでしょう。
 クリアで淡白とも言えるほどのテンポ。圧倒的な技術に対する驚きは今聞いても実に新鮮に感じられ、特にそれは細かいトリルやパッセージワークで効果が素晴らしい。常に聞く手の予測を2歩も3歩もリードするようなスケールの大きさの演奏。そして何より、音符一つ一つ全てが驚くべきエネルギーで心の真ん中に突き刺さってくるような、ハイフェッツの独特ではあるが同時にヴァイオリン界、音楽界の全てを物語ってくる奏法です。
 メンデルスゾーンは初録音。この10年後に録音した RCA 盤が有名ですが、当盤の方が抒情的な趣があり曲想に相応しい切れの良い技巧と濃厚な色気のある歌い方は同じだが、しなやかで剛直になり過ぎない当盤の方が好感が持てる。


http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-14262.jpg
October 31, 2019 at 04:00AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1013420.html
via Amadeusclassics

コメント

このブログの人気の投稿

優秀録音*優美な旋律と柔和な表現が忘れがたい ポリーニ、ベーム指揮ウィーン・フィル ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第4番

通販レコードのご案内  華々しいこの曲の随所に聴かれるフレーズは粒立ったピアノのタッチに思わずため息が出てしまう。 《独ブルーライン盤》DE DGG 2530 791 ポリーニ&ベーム ベートーヴェン・ピアノ協奏曲4番  当時ベームの最もお気に入りだったピアニスト、ポリーニとの共演です。全集が計画されていたようですが、1981年にベームが他界、第1、2番を替わりにオイゲン・ヨッフムが振って変則的なカタチで完成しました。  録音はギュンター・ヘルマンス。ポリーニの精巧なタッチが怜悧れいりに録られています。録音としては極上ですが、しかし、演奏としては、この4番は物足りない。ベームはバックハウスとの火花を散らした録音があるし、ポリーニは15年後にアバドとの全集があるので全集が完成しなかったことは残念とは思えませんね。  ベートーヴェンが36歳時に完成したビアノ協奏曲第4番をポリーニが録音したのは34歳の時。第1楽章後半のベートーヴェン自身によるカデンツァを始め、華々しいこの曲の随所に聴かれるフレーズは粒立ったピアノのタッチに思わずため息が出てしまう程のポリーニの若さの発露が優っている。ステレオ録音。 1976年6月録音。優秀録音盤。ギュンター・ヘルマンスの録音。 http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-19239.jpg June 27, 2019 at 09:15AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1065647.html via Amadeusclassics

歴史とジャズと竹あかり ― 映画上映、朗読劇とジャズ演奏で「四時軒の夕べ」を楽しみませんか

四時軒の夕べ 〜歴史とジャズと竹あかり 無料 開催日 2024年10月27日(日) 16:00〜17:10 映画上映 17:10〜17:30 「四賢婦人」朗読劇 17:30〜18:10 横井小楠記念館館長のお話 18:10〜18:30 ライトアップ点灯式 18:20〜20:00 ジャズ演奏(コントラバス、ピアノ、ドラム) 会場 四時軒 (熊本市東区沼山津1-25-91) 対象 どなたでも(申込不要・直接会場へ) 参加費 無料 主催 横井小楠顕正会 協力 熊本市都市デザイン課・秋津まちづくりセンター http://img01.ti-da.net/usr/a/m/a/amadeusrecord/Yokoi-Shohnan_gqR.jpg October 04, 2024 at 03:00AM from アナログレコードの魅力✪昭和の名盤レコードコンサートでご体験ください http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1194695.html via Amadeusclassics

名曲名盤縁起 プラター公園に訪れた、花満開の春を喜ぶ歌 シュトルツ〜歌曲《プラターに再び花は咲いて》

ウィンナ・ワルツの名指揮者シュトルツ没 ― 1975年6月27日  ウィーンという町には1年365日、朝から夜中まで音楽が鳴り響いている。夜中であったにもかかわらず、シュテファン大聖堂の建物そのものから厳かな宗教音楽が聴こえてくるのを味わうことも出来るほど、教会でのレコード録音は深夜を徹して行われている。  ウィーン音楽の王様はシュトラウス・ファミリーだが、20世気に入ってからのウィーンの楽壇で、指揮者・作曲家として大活躍したロベルト・シュトルツの音楽も、ウィーン情緒を満喫させてくれる。オペレッタやワルツに大ヒットがあるが、今日の命日には、100曲を超すという民謡風の歌曲から、ウィーンっ子がみなうたった《プラターに再び花は咲いて》を聴こう。映画「第三の男」で有名になった大観覧車のあるプラター公園の春を讃えた歌で、「プラター公園は花ざかり」というタイトルでも呼ばれている。 通販レコードのご案内  DE DECCA SBA25 046-D/1-4 ロベルト・シュトルツ レハール・メリー・ウィドウ/ジュディッタ  シュトルツにとっては、ヨハン・シュトラウスの作品をオリジナルな形でレコードに入れて後世に遺すことこそ、指揮者としての活動の頂点であることを意味すると云っていたのを読んだ事が有ります。ウィーンは音楽の都で数々の彫像や記念碑や街の通りにシューベルト、ブラームス、モーツアルト、ヨハン・シュトラウスといった大作曲家の彫刻が有ります。いずれも、生まれながらの(あるいはあとから住みついた)ウィーン市民でした。  作曲家であり指揮者であり、無冠のワルツ王の最後の人であるロベルト・シュトルツも、ウィーン音楽の生き字引としてこうしたカテゴリーに入るのではないか。1887年に天才少年ピアニストとして初めてヨーロッパを旅行してから今日に至るまで、ロベルト・シュトルツはその人生を音楽にささげてきたのである。その間には2,000曲の歌、50のオペレッタ、100にのぼる映画音楽を作曲し、数百回のレコーディングを行っているという。本盤もそうした中のセット。皆様をウィーンに誘う魅力タップリです。 ウィンナ・ワルツの伝統を保持する最後の指揮者  ウィーン・オペレッタ最末期の作曲家の一人として『春のパレード』などの作品を発表し人気を得たロベルト・シュトルツは、指揮者でオペレッ