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進撃する巨人*拍手なし シュヴァルツコップ、フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管 ベートーヴェン・交響曲9番「合唱」

“バイロイトの第9”は、演奏の記録ではなく、記録のための演奏でもなかった。

 世界一有名なバイロイトの第九です。宇宙のずっと遠くへ放たれた観測衛星ヴォイジャーに載せられたディスクに人類の音楽芸術の最高の演奏として選ばれた録音。1951年7月29日、バイロイト祝祭劇場でのライヴ録音。通称「バイロイトの第九」この録音に関しては賛否ありますが、個人的には大好きな演奏です。フルトヴェングラーが振ったから…、大戦後初のバイロイト音楽祭だから…、いろいろを考えさせられる演奏ですが、どうであれ芸術ってこういう事を言うんではないでしょうか?
 まるで、夏空の花火の様 ― 大輪の花を咲かせて一瞬にして消えてしまう ― この時代の、この演奏者の、この会場がそういう素晴らしい演奏を花開かせ一瞬にして消える。これが、この第九の素晴らしだと考え至りつつあります。夏空の花火が大輪の花を咲かせて、一瞬にして消えてしまう。聴き手も息を詰めて、そのタイミングを見つめている。バイロイトの第九はそういうものに思う。リハーサルを含めて3回の録音が残っているというから、それでも崩壊寸前のクライマックスを選んだのは、ライヴの緊迫を際立たせる演出だったのではないだろうか。
 録音こそ誰もが知っている1951年のバイロイト音楽祭の前夜祭でのライヴですが、発売されるまで何年も後です。本来はカラヤン指揮のワルキューレのライヴ録音プロジェクトでマイクセッティングのテストにテープを回していたものでした。それが結果、地球の宝になったのは、発売予定だったカラヤン指揮のワルキューレが第3幕だけの発売で終わったことで実現したものです。レコードは最初、演奏後の拍手もそのままに発売。擬似ステレオ盤が発売された時には最後の拍手はなかった。その後、日本での発売では《足音付き》のコピーが踊った。フルトヴェングラーが指揮台に立つ時の音だと言われた。が、演奏前の挨拶の後の音であるらしい。録音セッションは正式に行われたものでなかったし、実際本番の録音でなく、観客を入れてのリハーサルの演奏も使われている。その音は彫りが深く、各楽器の詳細な音の動きも聞き取れ、独唱は輪郭のしっかりした明瞭さで合唱も歪み感を感じません。レコード発売を目的に録音されるために演奏されたものだったらば、その時点で整音がされていたでしょう。スタジオで録音された演奏で有名なものに同じ英EMIからリリースされている晩年のトリスタンとイゾルデ が有りますが、録音を目的に行われた演奏であるから、演奏の記録ではなく、記録のための演奏だと思いますが、このバイロイト盤は違う。“バイロイトの第九”は、演奏の記録ではなく、記録のための演奏でもなかった。フルトヴェングラーは《バイロイトの第九》の録音を聞くことはなかった。マイクが立っていたことはわかっていただろう。翌日以降に行われる憎々しいあいつのためだと。フルトヴェングラーは演奏後、カラヤンと顔を合わせることになると嫌だからとさっさとバイロイトを後にしています。だから録音は、演奏の記録以上のものにはなり得ないのである。そのことは恐らく、フルトヴェングラー自身が一番良く分かっていたではなかろうか。しかし、万全のレコーディングが準備されていたとしてもカラヤンのシベリウスのような物事も起こるし、このレコードでもリハーサルを録音したもので補っている部分がどういう判断でなされたのはレッグに尋ねる以外にないでしょう。
 録音は、演奏の記録以上のものにはなり得ないのである。でも演奏家の芸術作品は、記録以上のもので後世に伝えられることは絶対にないのです。フルトヴェングラーは「音楽における客観とは、音楽と精神、精神と音楽が結び付いてひとつになった時に起こるのである」といっています。それ故に、崩壊寸前のクライマックスを選んだのは、ライヴの緊迫を際立たせる演出だったのではないだろうか。

通販レコードのご案内 この録音にも無限の価値がある。

JP 東京芝浦電気 HA1012-3 フルトヴェングラー・バイロイト祝祭劇場管 ベートーヴェン・第九《国内初出HA1012/13》JP 東京芝浦電気 HA1012-3 フルトヴェングラー バイロイト祝祭劇場管 ベートーヴェン・第九 60年以上たった現在でも繰り返し再販されている、人類の遺産とも称される歴史的名盤。第二次世界大戦後、初めてバイロイト音楽祭が再開された初日に演奏された記念すべきライブ録音であり、ベートーヴェン第9のまさに決定盤として君臨し続ける不朽の名盤です。
ALPは最後拍手があるが、HAは拍手は無い。HA5086/7以降の再発盤とは音色が大分異なる。音は私見ですが英国EMI ALP盤よりエッジが効いていて鮮明に聴こえ会場の雰囲気がハッキリと感じ取れる。英ALPとの比較では、レーベル金文字の盤のレーベル面の形状を比較して見たら同じ。ほとんど差は判らなかったが第4楽章おわりの合唱やシンバルはHA盤 (赤盤)の方が抜けがいいと感じた。東芝がメタルマザーを輸入して国内でプレスしたのか推測。
 指揮者入場の足音なし。終わり拍手なし。
 付録の村田武雄の解説17cm盤も赤盤で若かりし頃の村田氏の肉声が聴けます。
 1957年ごろの発売盤としては盤は奇跡的にニアミント、かつオリジナル解説書、インナージャケットも完備、ほぼノイズなく試聴できました。箱は時代相応写真の様に全体に染みが付着していますが解れ等はなく「骨董品」の域に入っています。オリジナル盤の証左であると考えています。
 発売は昭和32年頃ですが、蓋裏面に昭和35年8月11日に譲り受けた旨記載ありました。

http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-23213.jpg
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