何れも全体に覇気が漲っている快演。その演奏の切れの良さは、まさにこの時代ならではのもの。
ここには若い時代のカラヤンの面目があり、強引なくらいに自分の側にオーケストラを引き寄せ、好んで粘り気味の表情をつくりだすという姿勢がある。そしてカラヤンはまた、そうした表情の中でクライマックスをつくるうまさも見せる。その後のカラヤンのもののような相当に効果を意識した精緻な色彩感やテンポの動きはないにしても、若いカラヤンの意欲がはっきりと出ているところが面白い。1950年代初頭から継続しているロンドンでのフィルハーモニア管弦楽団とのEMIへの録音に加えて、1959年からはベルリン・フィルとはドイツ・グラモフォンへの、ウィーン・フィルとはデッカへの録音がスタートし、ちょうどステレオ録音が導入されて活気付いていたレコード市場を席巻する形になりました。中でも、名プロデューサー、ジョン・カルショウとのコラボレーションによって、ウィーン・フィルと進められたデッカへの録音では、スタンダードなシンフォニーのみならず、ホルスト「惑星」のパイオニア的録音も含む多様なオーケストラ曲や綺羅星のような豪華キャストをそろえたオペラ全曲盤が続々と生み出されたのです。
デッカが1950年代半ば以降ウィーン録音の根城としたゾフィエンザールは、響きの多さのみならず、演奏会に多用され録音のためには確保しにくいムジークフェラインとは違って、細部の音に至るまで明晰に収録しようとする同社の録音ポリシーには理想的な会場で、そこでの録音は、オーケストレーションの綾や空間性を生々しく再現する骨太なデッカ・サウンドの代名詞ともなりました。セッションは、ゴードン・パリーとジェームズ・ブラウンがエンジニアを担当し、各所で花を添えるクラリネットやオーボエ、ウィンナ・ホルンなど管楽器のソロの魅惑的な音色、芳醇な弦楽パートの存在感など、ウィーン・フィルの特徴的な響きを生々しく捉えています。
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《英 ワイド・バンド深溝 ED1 盤》GB DECCA SXL2269 カラヤン チャイコフスキー・ロミオ&ジュリエット 英国デッカ社では、1959年にEMIと契約の切れたカラヤンと契約。1965年までカルショーが後世に伝えるに相応しいカラヤン&ウィーン・フィルの名盤を、この6年間で製作することになる。何れも全体に覇気が漲っていて、後のEMIやDGGのベルリンフィル盤にはない魅力タップリのまったく聴いていてダレるような箇所がない、弦も管も美しく技巧的にも完成度は高い名盤量産。早速、後世に語り継がれるオペラを、ウィーンのソフィエンザール(カルショーがお気に入りだったリング収録場所)で着手。その録音セッショッンの合い間にカルショーは有名管弦楽曲の録音。カラヤンの指揮する曲は概して大胆さや迫力にプラスして、丁寧でかつ美しいということです。とりわけ、ゆっくりのテンポの美しい旋律は、カラヤンの最も得意とする部分だと思います。本盤では、例えば、怒濤のような旋律の中で、ぱっと花が咲くように美しいメロディーが流れる。この点にかけては、カラヤンは見逃さず見事に再現している。言い換えればダイナミックレンジが広いとでもいえましょうか。
このセッションと相前後して大票田のアメリカ合衆国をメインのターゲットとしてカラヤン&ウィーン・フィルは世界ツアーに旅立ち、大成功に終りデッカと蜜月関係にあった米RCA社からも金持ちターゲットのソリアシリーズで何枚か発売しているのは周知の事実です。デッカは、このカラヤンでウィーン・フィルを完全掌握したと云えよう。カラヤン&ウィーン・フィルの守備範囲とダイナミックレンジの広さを知らしめるのに役立っていると思います。
■1961年初発。1960年1月7日〜9日ウィーン、ゾフィエンザール録音。プロデュース:ジョン・カルショウ。優秀録音、名盤、ステレオ録音。
http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-16016.jpg
April 24, 2019 at 08:15AM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1091790.html
via Amadeusclassics
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