反ロマン的とか禁欲的といわれるコーガンとは別人かと思うほど、豊かな叙情性に富んだ音色を披露しており、優秀録音の名盤。
コーガンは度々来日して演奏会を開いたことで日本での愛好家は数多い。その来日の度に高級なアンプやスピーカーを大量に買い込んで帰っていったということだ。それぐらいは驚くに値しないけど、コーガンが帰国前に荷物の搬送のために来たトラックはソ連大使館から派遣されたものだったといいます。つまりは送料も関税もゼロ。なんとも国を上げての羨ましい後押しだろう。しかし、なかなか資本主義社会では起こりえないことが旧ソ連では起こっていたエピソードだ。ダビッド・オイストラフと共に20世紀ロシア-ソ連ヴァイオリン楽派を代表した巨匠、レオニード・コーガン( Leonid Kogan )が全盛期だった1959年録音。コーガンは1951年イザイ(エリザベート王妃)コンクールで優勝して以後、西側世界に本格的に姿を現わしましたが、50~60年代に西ヨーロッパの舞台に立つ度にロンドンとパリで制作された EMI 録音の数々は、ヴァイオリン演奏史において除くことができない輝く遺産として屈指のものとなっています。ソヴィエトの演奏家が西側で演奏する際は何かしらの報告の提出を求められていただろうことは想像に難くない。繊細で神経質なコーガンにとってそれは苦痛なことだったろう。このことが70年代以降コーガンが西側であまり演奏しなくなってしまうことと関係しているのかもしれない。
序奏から「一閃」、まさに研ぎ澄まされた鋭利な刃物が閃くようにソロが入ってくると鳥肌が立つ。コーガンは流石!と思わせるブラームスでコンドラシンとの息もぴったりです。現代のヴァイオリニストにも通じる完璧なまでのテクニックと、コーガンでしか表現することのできない豊かなヴィブラートを堪能できます。
コーガンのヴァイオリンは、ピンと筋の通った演奏。高音の持続音が特に美しい。細身で、冴え冴えとして、輝かしい音色。どこまでも伸びてゆく高音から、キラキラと燦めきがこぼれ落ちてくる感じで、ため息が出るほどの美音。冷ややかな感じがするほど清冽で透明な音色と強烈な集中力、完璧なイントネーションとボーイング・テクニックを特徴とする、現代のヴァイオリニストにも通じる完璧なまでのコーガンのテクニックは、19世紀後半以後ロシア=アウアー楽派が成し遂げた極めつけの境地と言えるでしょう。
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《仏TRIANONオレンジ盤》FR TRIANON TRX33.193 コーガン・コンドラシン・フィルハモニア管 ブラームス vn協奏曲(フランス盤) オイストラフと比肩して並び称されるロシアの名手コーガン。58歳の若さで亡くなったこともあり、不幸にもけっして録音に恵まれていたといえないコーガンは、メジャーに数多くの録音を残したオイストラフに比べるとあまりにも対照的。そのコーガンが英コロムビア社に残してくれたベートーヴェンと並び称される貴重な録音。オリジナル盤(U.K EMI Columbia SAX 2307 Blue Silver label ED 1 STEREO Original LP)は数十万円のプレミアム盤だけに、音質良好で人気の再発盤です。■1959年ロンドン、キングズウェイ・ホール、ステレオ録音。優秀録音、名演。
http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-22591.jpg
April 26, 2019 at 02:30PM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1094768.html
via Amadeusclassics
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