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名曲名盤縁起 不滅の巨匠の第一歩を印したショパンの傑作 ショパン〜バラード第1番ト短調

巨匠ポリーニ東京デビュー ― 1973年4月25日

FR DGG 2530 659 ポリーニ ショパン・ポロネーズ1-7番“交響曲の父”と呼ばれるフランツ・ヨーゼフ・ハイドンが、“パパ・ハイドン”と呼ばれて慕われるのは、彼が心の広い人間だったからだ。「自分より才能が上」と人に語ったモーツァルトからは、作品を献呈されるほど敬愛された。ベートーヴェンに対して、「やがてヨーロッパ最大の作曲家のひとりとなるでしょう」と称賛を惜しまなかったのも、並外れて謙虚で優しい人柄ゆえだった。
AU EMI OASD370 ポリーニ&クレツキ ショパン・… 交響曲だけでも100曲以上書くほど勤勉なハイドンは、湯守すとでもあった。笑ってしまう音楽もたくさん残しているが、いたずら心を起こして書いた名曲がある。「驚愕」の副題のある94番目の交響曲だ。どこかおかしみを湛えた主題が繰り返された後、突然、トゥッティ(総奏)のfffで、ドーンと一発。居眠りをしていた聴衆も、「びっくりした!」と飛び起きるという次第。緩徐楽章なのにティンパニが活躍するので、「ティンパニの打撃付き」とも呼ばれている。

ハイドンは生涯に108曲の交響曲を作り《驚愕》は94番目。自筆楽譜は、西ドイツのチュービンゲン大学とワシントンの国会図書館に分けられ、なお脱落している部分は未発見。

GB EMI SXLP 30160 ポリーニ ショパン・ピアノ協奏曲… バラードって何だろう。たとえば「好きなバラードを1曲挙げて下さい」と問われて、あなたは何と答えますか。
 嘗てネットの掲示板では、洋楽、J-POPから様々なアーティストの様々なヒット曲が並んだ。それから分かることは、緩やかなテンポの情感を感じさせる曲であるところが共通なぐらいで、一般に、愛をテーマとするセンチメンタルな歌を広くバラードと称するようだった。

 もともとバラードの語義は、14〜15世紀フランスの宮廷風の恋愛を主要な主題とした歌曲スタイルに由来する。また、中世以来のイギリスの歴史物語や伝説、社会風刺を題材にした歌曲にバラッドがある。
 しかしショパンの《バラード》は、どれとも異なる。ポーランドの詩人ミツキェヴィチが書いたバラードからインスピレーションを受けたとも伝えられるが、対象になった詩があるわけではない。むしろ標題音楽では無く、ソナタに近い。ショパンの独創から生まれた、絶対音楽だ。いずれもドラマティックで感情表現の振幅が大きい。

FR VSM C069-00182 ポリーニ ショパン・ピアノ協奏曲 なかでも、この《バラード第1番》は人気が高い。陰鬱で情熱的な第1主題と甘美な第2主題を中心に、目まぐるしく曲調を変化させながら、作曲時25歳の青年のエネルギーが華麗に爆発する。これほど起伏に富んだ音楽は、曲の長さこそ10分ほどだが、交響曲を1曲聴いたかのような充足感を覚える。
 この曲、終盤のコーダが実に派手なのだ。「急速に、熱烈に」の指示通り、熱に浮かされたかのような凄烈な音楽で、技術的にも腕の見せ所で最後の両手のオクターヴは、ピアニストによって弾き方は様々、一端テンポを溜めるのも開放的効果を得るが、ホロヴィッツは、さらに加速しながらクレッシェンドさせ弾き終えることで、恰も中絶したような悪魔の哄笑を残している。

 シューマンは、この曲に感銘して「ショパンの最も美しい作品」と称賛している。しかし、その称賛を受けてバラード第2番をシューマンに、ショパンは献呈したが彼は、そちらはお気に召さなかったようだ。シューマンの嗜好からすれば、わかる気もする。

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