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ただただ音符と戯れている★かつて鍵盤の獅子王 ヴィルヘルム・バックハウス ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ17番/28番

通販レコードのご案内 ベートーヴェンを弾く上でピアニストにとって意識せざるを得ない録音。ベートーヴェンを聴く者にとっても最初に選ぶべきレコード。

GB DECCA LXT6063 ヴィルヘルム・バックハウス ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ17番/28番(銀文字・初出)《英オレンジラベル、銀文字オリジナル盤》GB DECCA LXT6063 ヴィルヘルム・バックハウス ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ17番/28番(銀文字・初出) バックハウス晩年のステレオ録音による比類なく美しい名演です。嘗て鍵盤の獅子王と異名を取る日本でとりわけ人気の高いバックハウス。彼のピアノは、演奏に特徴がないのが特徴。老齢に達して彼は、ただただ音符と戯れている。

 『テンペスト』の名で知られる第17番は、3楽章全てがソナタ形式というユニークな構成。第1楽章はテンポや強弱の急激な変化や朗詠調のレチタティーヴォなど、まるで朗読を聞いているような大胆な楽想が特徴的。抒情的な第2楽章を挟んで、第3楽章は騎馬の足音から思いついたと言われる16分音符の音型が内なる情熱を孕みながら全編を疾走する、暗い劇的な音楽が本当に美しい。なお、『テンペスト』という通称は、弟子のアントン・シンドラーがこの曲とピアノ・ソナタ第23番の解釈を尋ねた時、ベートーヴェンが「シェイクスピアの『テンペスト』を読め」と答えたとされるところに由来しているそうです。

 1816年に作曲。まさに孤高の境地に達するベートーヴェン後期のスタイルを持った最初のピアノ・ソナタが第28番です。3楽章構成で、第1楽章のきわめて自由な形式の中で漂う夢のような美しい音楽が必見。第2楽章は三部形式の行進曲風幻想曲、第3楽章は弱音ペダルによる寂寥感をたたえた序奏を経て堂々としたソナタ形式で展開します。

これは鑑賞者にも学習者にも、永遠にベートーヴェンのピアノソナタのコンパス。

で、彼のことばの中にこんなのがある。
私は、コンサートの準備に際して、楽譜の研究とともに、何よりも音階練習に集中する。それに加えて、アルペジオの練習、さらにバッハの平均律。これが私のテクニックの基礎である。
私のテクニックに興味をいだく人たちに、『私が頼りにするのは音階練習だ。音階プラス努力だ』と言うと、たいていの人は驚くようだ。
・・・・・しかし、私は、まじめに努力する音楽学生に手の届かないような、そんな不思議な秘訣など、何も持ってはいない。
・・・・・もう一度言うが、私のテクニックの基礎は、ただただ音階につきるということを特に強調しておきたい。日ごとの絶えざる音階練習こそ大切なのだ。
 一見、地味で素っ気無い無愛想とさえいえる辛口の表現だがバランスのよさは、聴きこむと学究的と評されるバックハウスらしい構成力と曲への愛情が感じられる。
 実際のバックハウスの演奏は極めて果敢に「主観的」であって、テンポの即興的コントロールによって音楽の迫真性を獲得している事が彼の芸術の真髄であると、この録音を聞く事によって理解されましょう。今世紀のベートーヴェン演奏の規範と評価されるアルバム。それは決して彼の演奏が「教科書的」であると言うのではありません。
 要は、テクニックをひけらかすわけでもなく、特徴が無いのが特徴といえるでしょうか。


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