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枯淡の境地、ブラームス晩年の哀愁を表現しきった名演奏 - ブルーノ・ワルター コロムビア交響楽団 ブラームス・交響曲全集

特に第4番はステレオ初期を代表する歴史に残る名演として高い支持を得続けている。

 ブルーノ・ワルターとオットー・クレンペラーのレパートリーはモーツァルトとマーラーの音楽が大きな柱の一つになっている。
 周知の通り、ともにユダヤ人であるワルターとクレンペラーはマーラーの直弟子にあたり、マーラーを熱心に取りあげていた。ワルターの演奏は情緒的とされながら、音の出し方は似ている。
 ワルターは、ウィーン・フィルの楽員によく極端な対象を要求した。例えば、モーツァルトの交響曲のピアニッシモのところで、オーケストラがまだ弾きはじめないうちに中断して、『皆さん、もう大きすぎます』と言うことがあった。また『フィガロの結婚』の序曲の練習では、やはりオーケストラが弾き始める前に中断して、『皆さん、もうテンポが遅すぎますよ』というのであった。
 こうしたことはワルターの個性というより、同世代の指揮者の特徴である。この第4交響曲でも、フレーズの変わり目でのリタルダンドも極端でなくなめらかに変化するのでカット割りで繋いだ映画のような唐突さを感じない。
 ワルターのブラームスはいずれも絶品で、滋味あふれる深遠な世界は多くのファンをひきつけてやみません。ブラームスが作曲に長い時間をかけた第1交響曲でも、ワルターの確かな構成力と、慈愛に満ちた表現を聴くことができます。その他の協奏曲、管弦楽作品、ドイツ・レクイエムも代表的名演として後世に聴き継がれる名演奏です。 録音も極めて秀逸で、とても50年以上前のものとは思えない瑞々しさ。ブラームスの音楽に、愛情を持って寄り添うワルターの姿が彷彿とさせられました。
 コロンビア交響楽団の性能は、お世辞にも高いものではありませんでした。しかし、ワルターによるスタジオ録音のために編成された特殊な楽団でしたから、ワルターの作ろうとする音楽を何としても形にするのだというひたむきな姿勢がひしひしと感じられ、指揮者とオーケストラが一つになったかのような演奏が展開されています。
 ワルターがコロンビア響と残したステレオ録音によるブラームスの全録音は、同曲の永遠のスタンダードとしての位置は今後もゆるがないでしょう。

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