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エレガントでエスプリが効いたハーモニー★喜びのための音楽 ドラティ指揮ロンドン響 仏蘭西序曲集

街中でカフェーを開こうかというお店のすてきな音楽で演出を ― 豪華見開きジャケ表紙を飾るジャン・コクトーの名画がすべてを物語るフランスもの。

NL PHILIPS 838 434LY ドラティ 仏蘭西序曲集《蘭 レッド・ラベル白文字盤》NL PHILIPS 838 434LY ドラティ 仏蘭西序曲集 ジャン・フランセのモットーは、「喜びのための音楽」を作り上げることでした。エレガントでエスプリが効いたハーモニー、極めて明晰な音楽の響きが魅力で、音楽のユーモア、優雅さと皮肉がうまくちりばめられた、独自の世界が広がります。
 レパートリーは広く、ハイドンからメシアンまであらゆる時代の音楽をこなした。とくにバレエ音楽が得意で、ストラヴィンスキーの三大バレエは評価が高い。詳しいことは分らないが、基本に忠実でドラマティックな演奏をする指揮者アンタル・ドラティ。ドラティは「オーケストラ・ビルダー」と呼ばれるほど、低迷したオーケストラ、解散しかけているオーケストラを復活させてきた辣腕指揮者で、そうしたオーケストラとの録音も多く残しました。メンバーが自信を取り戻し、生き生きと演奏している様子がオーケストラの響きから伝わるようで、その演奏は奇をてらわない、スタンダードで手堅い音の作り方は実に見事です。
 ドラティはハンガリー出身の指揮者。カラヤンより2つ年上の1906年に生まれ、亡くなったのは1988年ですから、カラヤンと同じ時期に生まれ、同じ時期に亡くなっています。正確なリズム、テンポを必要以上に揺らさない、濃厚な合奏と金管楽器の処理の上手さで整然とした響きを実現させる技量と、自身の主張を明確に伝達したうえでオーケストラの持ち味を最大限引き出していることで、カラヤンとドラティの共通点は数々あり、レコード録音でオーケストラの魅力を伝えると共に未知の楽曲の紹介にも積極的で、後期バロックから戦争前後の近代音楽までをレパートリーとしているなど、時代が求めていたことに応えた指揮者だったのではないでしょうか。

 このレコードは、米マーキュリー盤のタイトルは『パリ 1913-1938(米MERCURY SR90435)』でした。アルバム・タイトル通り、20世紀初頭、世界大戦直前の近代フランス音楽集です。20世紀のフランス・クラシック音楽と言えばクロード・ドビュッシーが筆頭でしょうけれども、彼はパリ市内が砲撃に晒されている最中にアパートの一室で亡くなります。このレコードで聴く4曲は、今でこそ馴染みは薄い楽曲ですがパリでの評判は良いものでした。
 戦時歌謡というのが日本にあるように爆撃で荒廃するなんて思いもしない、明るい未来を期待する息吹を聴くことが出来ます。熊本にいても目につくのが新装している建物や、新しく家が建て替わっていく姿。『TSUNAMI』の記憶から生まれ変わっていく今の日本にぴったり添う音楽ではないでしょうか。

「コレクターだけの楽しみにしておくのはもったいない。クラシック音楽の余り知られていない珍しい曲を録音したレコードといった認識に押し込めないで、リスニング・ミュージックとして広くこのご馳走を味わって欲しい。有名曲を多少違う程度の解釈だけで演奏、録音するのではなく黄金期のドラティ指揮ロンドン交響楽団が、最高の録音で音楽の魔法でご馳走してくれる。それはミネアポリスに引けをとらない。」
 ミヨー作曲バレエ 《屋根の上の牛》、フランセ作曲《ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ》、オーリック作曲《序曲》、サティ作曲バレエ 《パラード》。1965年8月録音。

新鮮な息吹を聴く

 マイケル・リッチモンドが“新鮮な息吹を聴く”と賞賛している。レコーディンスはマーキュリーとフィリップスの共同で行われ、ハロルド・ローレンスがプロデュース。1965年録音。
 ビートルズの初期盤を彷彿とさせる。米マーキュリーらしい鮮明、華麗、色彩感とエネルギーに溢れた優秀録音盤。クラシック録音のステージ感がまだ馴染まないと言った、耳慣れして居ないけどクラシックを聴き始めたい。そういう向きにはマーキュリー録音をマークして欲しい。このレコードにはみんなが好きなサティの数少ないオーケストラ曲が収録されています。
 サティのパラードは、見世物小屋やサーカス、劇場での幕間の音楽で同じ旋律が何百回と繰り返されます。フランセの「ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ」、ミヨーの「屋根の上の牛」、オーリックの「序曲」と現在のクラシックの主流からは馴染みの薄い作品4曲。でも、パッヘルベルのカノンが大好きな日本人には受け入れやすいはず。街中でカフェーを開こうかというお店のすてきな音楽の演出になるでしょう。

ジャン・フランセ Jean Francaixは、1912年5月23日に、作曲家にしてピアニストの父と、声楽家で合唱団を設立した母のもとに生まれ、10歳でナディア・ブーランジェに和声の手ほどきをうけました。同年、第1作となる作品を作曲、ラヴェルのすすめでパリ音楽院に進み作曲を学ぶ傍ら、ピアニストとしても活躍しました。18歳の時、イシドール・フィリップのクラスで第一等を獲得。20歳代前半から作曲家およびピアニストとして世界で認められるようになり、以降、オペラ、バレエ、管弦楽作品、協奏曲、映画音楽、声楽音楽など多岐にわたる業績をのこしています。娘クロード(ピアニスト)との共演など、晩年まで積極的に演奏活動も行っていました。1997年9月25日没。


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