スキップしてメイン コンテンツに移動

芸術は神の微笑◉イエペス&デ・ブルゴス指揮スペイン国立管 ロドリーゴ・ある貴紳のための幻想曲/オアナ・3つの描写

通販レコードのご案内 ギターという小音量。管弦楽を前にしての協奏曲はマイクによる集音という前提に録音がある。このLPも「ステレオはロンドン」というイメージを決定づけた。

GB LONDON CS-6356 イエペス&ブルゴス ロドリーゴ・ある貴紳のための幻想曲/オアナ・協奏曲「3つの描写」《英国オリジナル盤》GB LONDON CS-6356 イエペス&ブルゴス ロドリーゴ・ある貴紳のための幻想曲/オアナ・協奏曲「3つの描写」 「とと姉ちゃん」の中で、トースター商品試験の結果が一台も良い結果に成らなかったことで、編集長は原稿の執筆に苦労しますが、クラシック・ギターとオーケストラのライヴが無いに近いのは難題が多いからです。
 ナルシソ・イエペスは1952年に、パリのカフェで映画監督のルネ・クレマンと偶然知り合い、「映画自体はすでに撮ってあるが、どんな音楽をつけたらよいか決めかねているので、映画のための音楽を担当してほしい」依頼を受けた、映画『禁じられた遊び』の音楽の編曲・構成、演奏を1本のギターだけで行った。そして、その映画が公開されると、メインテーマ曲「愛のロマンス」が大ヒットし、世界的に有名なギタリストとなりました。それから世界各地でリサイタルやオーケストラとの共演を行い、日本にも1960年から1996年までの間に計17回訪問しました。初めて手にしたギターでマスターした曲が《禁じられた遊び》の主題曲だったギター少年がほとんどだったでしょう。フォーク・ソング、グループサウンズがブームになろうとしていました。当時の日本の若者文化に大きな影響を与えたと言えそうです。フォークソンググループ、ジャズやロックのギタリストに育った多くがイエペスの影響でスタートしたと言って過言ではないでしょう。クラシック・ギターというのも知らない、若者に支持されました。それほどギターの音楽が少なかったのでした。
 イエペスの師のうちにデ・ラ・マーサの名があるのは当然ですが、ヴァイオリンのエネスコ、ピアノのギーゼキングと発想を変えた楽器の先達の名前があがります。それは、普遍的な西欧音楽での歴史のつながりをみていたのでした。現代には、もっと表現主義的なギター協奏曲も並びます。ロドリーゴの《ある貴紳のための幻想曲》とオアナの協奏曲《3つの描写》はイエペスが作曲家に依頼し、イエペスのために作曲され、イエペスの演奏で世界初演された多くのギター協奏曲の中の名曲です。セゴビアがギターという大衆楽器を芸術的なものとするために欠かせなかったのはレパートリーの拡充でした。
 バロック、古典のソル、そして、ロマンのタレガといった例外を除き、ギターの作品のうち、奏者以外のところで認知されている作品はきわめて少ない。そのため、行われたのがバッハなどの既存の曲の編曲であり、ポンセなどに委嘱された新作の提供でした。表現主義を経た音楽多様の時代に、新作として生まれたギター協奏曲は、新古典的な形をもつものが多く、現代的な視点を持つ作品が少ないという事情がありました。特殊な奏法だけでなく、フレットの配置など、ギター作品の作曲には、ある程度の知識が必要でした。編曲ものには、極端に難しいものが多く並び、事情を知らない作曲家も難易度が高くなります。たとえばアランフェス協奏曲のロドリーゴの楽器はピアノであり、ギターのデ・ラ・マーサの助言が入れられています。ギタリストが自身の楽器を極めるために、同時にピアノでの発想を必要とする。和音の並び、表現と基礎をピアノに置き、同時にギター的な優位、とくに転調への対応といったものを活かすわけです。イエペスの偉業は、自身も編曲の上、多くのレパートリーを拡充する一方、現代的な作品の紹介にも務めたことにあります。
 『ナルシソ・イエペスの芸術』と題して、1975年前後にドイツ・グラモフォンに集大成が録音されますが、本盤は1958年の DECCA ステレオ録音盤。この2作品に限らず、ギターという小音量。管弦楽を前にしての協奏曲はマイクによる集音、音量を増したものという前提に録音がある。後年のドイツ・グラモフォンとマルチ録音の違いも、ギターと管弦楽曲のレコードを比較して聞く楽しみがある。民族的な語法をも生かした古典的な佇まいと、先鋭と並存させた曲の組み合わせも魅力的です。また本盤は、ユニークなジャケット・デザインが目を引きます。英国盤とは違う、米国盤はつくりもしっかりしています。1960年代のアメリカの豊かさを、こうしたところにも感じることが出来ます。


http://img01.otemo-yan.net/usr/a/m/a/amadeusclassics/34-19633.jpg
March 29, 2021 at 09:00PM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e999716.html
via Amadeusclassics

コメント

このブログの人気の投稿

♪東側の最高傑作◉フランツ・コンヴィチュニー ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 ベートーヴェン・交響曲7番

楽譜に対して客観的に誠実に取り組んで、ゆったり目のテンポでスケール大きく描きあげられた演奏と存在感あるゲヴァントハウスの音色 《独ブラック銀文字盤》DE ETERNA 825 416 コンヴィチュニー ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 ベートーヴェン・交響曲7番 旧東ドイツ時代のベートーヴェン演奏の精髄として当時大きな話題となった全集からの一枚。ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスターを終生務めたコンヴィチュニーの最高傑作で、重心の低い質実剛健な演奏は今もってひとつの基準となる名演と言えます。 序奏からズドンとヘビィ級の音塊をぶつけてきます。 ― しかし野暮ったくはない。序奏が終わっても、一切慌てず騒がず。この辺、フランツ・コンヴィチュニーならではの堂々とした音楽作りが堪能できます。 言うまでもないことですがベートーヴェンが250年前に作ったスコアを録音が発明された20世紀から以降の、120年間ほどの演奏を私たちは聞き返している。名指揮者パウル・ファン・ケンペンが死去した後、志鳥栄八郎が「あれほど騒がれていた彼が、いまそうでなくなった。演奏家というのは死んだらおしまいだ」と言っていた。とはいえ名演奏家が死後、レコードで聴き継がれるケースも有る。 どんなに録音技術が進んでも、それは生の姿を十全には伝え得ないが、演奏家の音をいたずらに増幅・美化させることも出来てしまうのが録音技術でもある。ドイツの伝統を継承する巨匠コンヴィチュニーのベートーヴェンは、彼の至芸を愛でる者にとっては格別のレコードです。 聞き手の耳をさっと捕まえてしまうような魅力には乏しいかもしれません。聞き手の耳をすぐに虜にするような愛想の良さや声高な主張もありません。まず、すぐに気がつくのは、今ではなかなか聞くことのできなくなったふくよかで暖かみのあるオーケストラの響きの素晴らしさです。きらきらした華やかさとは正反対の厚みのある響きです。弦もいいですが、特に木管群の響きが魅力的です。確かに、昨今のオーケストラと比べれば機能的とは言えないのでしょうが内部の見通しも良く透明感も失っていません。とは言え、コンヴィチュニーの基本は「淡麗辛口」です。 ドンと構えていて、ここぞというところではぐっと力こぶが入る「野蛮さ」みたいなモノが残っている演奏。隅々まで指揮者の指示が行き届...

芳香に充ちている★ティボール・ヴァルガ モーツァルト ヴァイオリン協奏曲5番 スメタナ ピアノ三重奏曲

通販レコードのご案内 ライブですが録音頗る良好です。 《フェスティバル盤》CH FESTIVAL TIBOR VARGA SION ティボール・ヴァルガ モーツァルト・ヴァイオリン協奏曲  ハンガリー出身の名ヴァイオリニスト、ティボール・ヴァルガが自身のオーケストラと共に録音した珠玉のモーツァルトです。このアルバムでは、ヴァイオリン独奏、そして指揮にと大活躍。生き生きとした演奏を繰り広げています。  音楽に身を捧げたとされる名匠、ヴァルガの端整なヴァイオリン演奏は、現在でも前置きなしに、そのまま通用するほどのものだ。1976年スイス・シオンで開催されたティボール・ヴァルガ音楽祭実況録音。ライブですが録音頗る良好です。楽器のヴィヴィッドな響きに驚く。古き良き時代を感じさせる優雅な演奏は近年の演奏が失った芳香に充ちている。この素晴らしいヴァイオリニストの残した遺産を、楽しもうではないですか。 《 FESTIVAL TIBOR VARGA SION 》1967年からスイスのヴァレー州シオン市で開催されている、ティボール・ヴァルガ シオン国際ヴァイオリンコンクールは、比類ない演奏と後進の指導で知られる、シュロモ・ミンツが芸術監督を務め、若い才能の発掘と育成で定評がある、若手ヴァイオリニストのための国際コンクールです。シオン・ヴァレー州音楽祭の期間中に行われ、その中心イベントとして注目を集めています。過去には、前橋汀子やジャン・ジャック・カントロフなど、現在の名ヴァイオリニストが受賞。 通販レコード詳細・コンディション、価格 プロダクト レコード番号 番号なし 作曲家 ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト 演奏者 ティボール・ヴァルガ 録音種別 STEREO 販売レコードのカバー、レーベル写真 コンディション ジャケット状態 M- レコード状態 EX++ 製盤国 CH(スイス)盤 通販レコード 詳細の確認、購入手続きは品番のリンクから行えます。 オーダー番号 34-22740 販売価格 3,300円 (税込) 「クレジットカード決済」「銀行振込」「代金引換」に対応しております。 http://img01.ti-da.net/usr/a/m/a/amadeusrecord/34-2274...

音楽の深まりと高まり◆存在感が圧倒的 グレン・グールド J.S.バッハ・平均律クラヴィーア曲集2巻 BWV854〜861

通販レコードのご案内 前奏曲とフーガの変幻自在なグールド的バッハのめくるめく世界が展開される。 《英ウォーキング・アイ盤》GB CBS SBRG72337 グレン・グールド バッハ・平均律クラヴィーア曲集2巻  グレン・グールドが米CBSと録音契約、1957年から録音開始した一連のバッハは秀逸で、聴き返す度に抗し難い魅力に引き込まれてしまいます。グールドの類まれなる才能を感じさせる圧倒的な名演だ。グールドによるバッハのピアノ曲の演奏は、オーソドックスな演奏とは到底言い難い超個性的な演奏と言えるところであるが、本盤のパルティータの演奏は、グールドの類稀なる個性と芸術性が十二分に発揮された素晴らしい名演と高く評価したい。  グールド以前のバッハ演奏と比べても、グールド他界後も、幾多の高名なピアニストが登場しようともグールドを過去に押しやるようなピアニストは現れていないと思えるぐらい異色のキャラが光る演奏は、何十回、何百回、レコード盤に針を下ろそうとも、そこには気持ちの良い緊張が生まれてきます。  バッハのゴルトベルク変奏曲の大ヒットによって一躍その名を高めることになったこともあってか、バッハはグールドにとって常に特別な存在であり続けました。その独特な解釈は、粒立ちのはっきりとした音と、思索的な深まりを感じさせる音を使い分けた見事なもので、グノーのアヴェ・マリアに使われておなじみとなった美しい前奏曲で開始される「平均律クラヴィーア曲集」でも、そうした特性がよく活かされており、48の前奏曲とフーガの組み合わせから浮かび上がる音楽の深まりと高まり、存在感が圧倒的です。  LPレコードで4枚。1962年から1971年にかけて6回のニューヨークの30丁目スタジオと、トロントのイートン・オーディトリアムでのセッションで録音。最終的に第1巻、第2巻通しで聴いて統一感を持たせる調整は行われてセット発売もされましたが、第1巻の後半第9曲から第16曲を演奏した本盤は、48の前奏曲とフーガの組み合わせで構成された「平均律クラヴィーア曲集」でも、独立した味わいで鑑賞できる。  侘びた風情の、落ち着いたプレリュードで始まる。初めて訪れた街を旅しているのに、前にも見たような懐かしい雰囲気に浸っていると、古いグレゴリオ聖歌が聞こえてくる第9曲。続く第10曲は、イタリア人の恋人たちがおし...