オルフ自身が監修を務めたこともあり歴史的な価値のある今もって「カルミナ・ブラーナ」の最高の演奏として名高い録音。ヨッフムの代表的なアルバムで合唱を含めた声楽陣も素晴らしい。
「カルミナ・ブラーナ」は、ヨッフム盤が絶対存在。半世紀以上も判断基準となっているので聞いていない人はいないので説明がし易い。ドイツで最も売れたクラシックのアルバムは? ― カラヤンでもパヴァロッティでも、ましてボチェッリでもありません。それがこのヨッフムの《カルミナ・ブラーナ》です。録音から40年を経た今でも、この曲の最高の名盤であることに依存を唱える人はまずいないでしょう。大編成ながら、その録音の精度も今でも指折りです。「世俗」とはよく言ったもので、歌詞は極めて”世俗”的でユーモアに溢れていて、ヨッフムならではの、骨太で実に颯爽とした素晴らしい演奏である。
中世の民衆の雄叫び
カール・オルフは子供の音楽教育プログラムに情熱を注ぎ、今ではこの分野での開祖的な扱われ方をしています。この《カルミナ・ブラーナ》は、南ドイツのボイレン修道院で作曲者が見つけた13世紀頃に書かれた歌集を下敷きに作曲された、大編成の合唱とオーケストラ、そして舞台装置付きの上演形式を想定して書かれた大がかりな作品です。この歌集は教会に出入りした様々な民衆が残した歌を綴った俗っぽい内容です。曲を構成している形式、和声、メロディー、リズムも実にシンプルなゲルマン魂の熱いものを感じさせてくれるものです。《おお、運命の女神よ》ダイナミックス・レンジも充分に大規模編成で迫力満点な全曲のプロローグにふさわしい壮烈なヴァイタリティに溢れ、一度耳にすれば容易に忘れられません。
《運命の女神の与えた痛手を》と運命の女神フォルトゥナを讃える野太い合唱と、ピアノ2台を加えた大規模な打楽器群が織り成す壮烈音響が圧巻です。ここでのヨッフムは小細工抜きの剛直きわまる力押しで、作品の原始的活力を赤裸々に表現しています。
《春の愉しい面ざしが》と、早春の芽吹きを思わせる軽やかな序奏に導かれ、コーラスが古代旋法に基づく神秘的なメロディを歌います。
《太陽は万物を整え治める》と、デリケートな歌い口でフィッシャー=ディースカウのバリトン独唱で生命の神秘を優しく歌います。
《見よ、今や楽しい》と、コーラスとオーケストラでの生命賛歌。春の訪れを喜ぶ庶民的な活力が聴きもの。
《踊り》は、オーケストラのみの間奏曲。民族舞踊に基づく活気あふれる音楽です。
《森は花さき繁る》と《小間物屋さん、色紅をください》は、ともに村祭りのワンシーンといった趣の陽気な曲。
《円舞曲》は緩・急・緩・急の4部構成による対比が聴きどころ。
《たとえこの世界がみな》と、トランペットのファンファーレと爆発的な合唱で、前曲の急の部分を引き継いで始まる歓喜の歌で第1部を力強く締めくくります。
《胸のうちは、抑えようもなく》と酔漢の酔いに任せた自暴自棄の歌では、フィッシャー=ディースカウ得意の性格表現が光ります。
《昔は湖に住んでいた》ことを想い、酒の肴に供せられる我が身を儚む白鳥の歌。ドイツ最高の性格テノールと謳われたシュトルツェの強烈歌唱が圧巻。
《わしは院長さまだぞ》での、フィッシャー=ディースカウも負けず劣らずで、その異様なまでの表現力には目を見晴らされます。
《酒場に私が居るときにゃ》と男声合唱の粗暴なパワフルぶりに仰天。オペラの実演で鍛えたコーラスならではの力技が、猥雑な第2部に痛快な幕引き役を果たしています。
《愛の神はどこもかしこも飛び回る》愛らしい少年合唱とソプラノ独唱(乙女)で第3部は始まります。
《昼間も夜も何もかもが》乙女への思いで巡っているとバリトン(若者)が愛への憧れを、《少女が立っていた》では乙女が愛のときめきを歌い上げます。
《私の胸をめぐっては》バリトンが高まる胸の内を吐露、合唱はそんな若者をそそのかすように、《もし若者が乙女と一緒に》《おいで、おいで》と囃し立て、一方、乙女は《天秤棒に心をかけて》に揺れる思いを託します。この曲はシャルロット・チャーチが取り上げたことでも知られていますが、ヤノヴィッツの美声はまた格別。
《今こそ愉悦の季節》では、いよいよ若者が乙女に求愛。問答を繰り返す二人を、合唱と少年合唱までもが力強くもり立て、乙女はついに若者の愛を受け入れます。
《とてもいとしいお方》は乙女の喜びを表すソプラノの超高音が聴きどころ。
《アヴェ》と合唱は愛の成就を高らかに祝福します。
《おお、運命の女神》で冒頭のナンバーが再び現れ、壮大な愛と命の一大スペクタクルは大団円の内に幕を閉じます。
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オイゲン・ヨッフムは、ドイツ音楽の権化ともいえる評価を得た指揮者で、若い頃から新しい音楽の紹介に熱心に取り組んでもいます。《カルミナ・ブラーナ》はそんなヨッフムの心を掴んだ作品の様です。複数録音し、オルフの紹介そのものにも大きく貢献しました。ここでの演奏は感極まったヨッフムの熱い心がこれ以上無いくらいのテンションで炸裂。完全にアンサンブルが破綻をきたしているナンバーもあります。しかし、百も承知の上で突き進んで行きます。結果、この《カルミナ・ブラーナ》の真髄が、正確さや表面的な美しさではなく、腹の底から歌い上げる心の叫びであることを、明快に教えてくれます。
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May 26, 2019 at 08:00PM from アナログサウンド! ― 初期LPで震災復興を応援する鑑賞会実行中 http://amadeusclassics.otemo-yan.net/e1028244.html
via Amadeusclassics
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